出版社内容情報
戦国武将で一際異彩を放ち今なお謎に包まれた明智光秀を描く表題作他、郷里の歴史に材をとった「上意改まる」「幻にあらず」等四篇。
坐して滅ぶか、あるいは叛くか――異色歴史小説集!
戦国武将で一際異彩を放ち今なお謎に包まれた明智光秀を描く表題作他、郷里の歴史に材をとった「上意改まる」「幻にあらず」等四篇。
内容説明
「時は今あめが下しる五月哉」明智光秀はその日の直前こう発句した。坐して滅ぶかあるいは叛くか。天正十年六月一日、亀山城を出た光秀の軍列は本能寺へと向かう。戦国武将のなかでもひときわ異様な謎に包まれたこの人物を描いた表題作他、郷里の歴史に材を借りた「上意改まる」など3篇を収録。異色歴史小説集。
著者等紹介
藤沢周平[フジサワシュウヘイ]
昭和2(1927)年、鶴岡市に生れる。山形師範学校卒。48年「暗殺の年輪」で第69回直木賞を受賞。主要な作品として「白き瓶 小説 長塚節」(吉川英治文学賞)など多数。平成元年、菊池寛賞受賞、6年に朝日賞、同年東京都文化賞受賞、7年、紫綬褒章受章。9年1月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoshida
125
歴史上の実際に起きた事柄を描く短編集。藤沢周平さんと言えば、海坂藩を中心とした武家物、そして市井の人々を描く町人物が主だと思う。本作は明智光秀や若き日の上杉鷹山を描く。実在した人々を描いた作品にも卓越した力量を感じる。白眉は若き日の上杉鷹山を描いた「幻にあらず」。米沢藩は石高半減の沙汰の後も政治や財政の改革が出来ず、貧窮した。嗣子がなく日向秋月家の次男を世嗣ぎとして迎える。後の上杉鷹山である。若き英邁な藩主のもと、様々な改革を進める竹俣当綱達。反対勢力と藩主との緊迫のやり取り。滋味深い面白さがある。名作。2020/06/03
とん大西
115
北野武『首』に続いて、本能寺の連読。表題作「逆軍の旗」…叙情的です。敬愛していた信長に疎まれはじめた光秀の心情。追い込まれていく焦燥感。残された道は叛くことのみ。孤独で痛々しい光秀の胸の内が淡々と語られていく。「麒麟」の光秀とはちょいと違う翳りと憂いのダンディズム。あぁ、こんな光秀が読みたかったんだと再認識。セレナーデが似合うラストも絶妙でした。他の短編では若き日の上杉鷹山を描いた「幻にあらず」も絶品。藩財政立て直しのスローガン。とは言え、藩士たちも生身の人間。辛く苦しい年月だったんでしょうね…。2020/08/08
goro@the_booby
73
史実を題材にした4編。光秀は何故信長を殺さなければならなかっのか、「逆軍の旗」での藤沢考察が肯ける。「上意改まる」はラストは哀しいが一番心に残る作品でした。そして上杉鷹山を描いた「幻にあらず」は藩主の孤独を描いて秀逸でした。【海坂藩城下町読書の集い】イベント参加中。2021/12/26
shincha
68
史実にあったことを藤沢周平さんの丁寧な文章で小説としている。夕暮れの景色や匂い。夜の暗さなど、情景が鮮明に浮かぶ。表題の「逆群の旗」では、明智光秀の本能寺の変までの心の変遷や、その後の心の動きなどを丁寧に描写している。どの作品も心に余韻を残す終わり方。個人的に好きなのは、最終章の「幻にあらず」かな。米沢藩の困窮と窮乏を何とかしようともがいた竹俣当綱(まさつな)と若き藩主の上杉治憲(鷹山)。「七家騒動」を元に書かれている。解説で藤沢周平氏の遺作となったのも上杉鷹山が主人公との事。これは、読まなくちゃ!2024/03/07
けぴ
57
明智光秀の心情を緻密に描く『逆軍の旗』、米沢藩の貧困の中で生じた七家騒動を時系列に追う『幻にあらず』の二つが好み。あとがきの一文が印象的。「ありもしないこと、つまり虚構を軽くみたり、また事実にもとづいた小説を重くみたりする気持ちがあるわけではない。片方は絵そらごとを構えて人間を探り、片方は事実をたよりに人間を探るという、方法の違いがあるだけで、どちらも小説であることに変わりないと考える。」2022/06/05
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