出版社内容情報
全国を放浪し、死者を悼む旅を続ける坂築静人。彼を巡り、夫を殺した女、人間不信の雑誌記者、末期癌の母らのドラマが繰り広げられる。
内容説明
不慮の死を遂げた人々を“悼む”ため、全国を放浪する坂築静人。静人の行為に疑問を抱き、彼の身辺を調べ始める雑誌記者・蒔野。末期がんに冒された静人の母・巡子。そして、自らが手にかけた夫の亡霊に取りつかれた女・倖世。静人と彼を巡る人々が織りなす生と死、愛と僧しみ、罪と許しのドラマ。第140回直木賞受賞作。
著者等紹介
天童荒太[テンドウアラタ]
1960年、愛媛県生まれ。86年に「白の家族」で第13回野性時代新人文学賞を受賞。93年には『孤独の歌声』が第6回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。また96年に『家族狩り』で第9回山本周五郎賞を受賞。2000年ベストセラーとなった『永遠の仔』で第53回日本推理作家協会賞を受賞。09年には『悼む人』で第140回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
253
第140回直木賞受賞作品。不慮の事故を遂げた人を「悼む」ため、全国を放浪する坂築静人を軸に物語は展開される。なぜ静人は「悼む」のかは上巻ではまだ明らかにされない。雑誌記者蒔野、静人の母巡子、夫を殺害した女性倖世の物語が静人の「悼む」行為とからめさせながら展開していく。下巻でどう決着をつけようとするのか・・2011/05/21
青葉麒麟
188
自分が今まで人を悼んだ事があるかな?って考えながら読んだ。悲しむ事はあるけど、悼むってのは中々ないよなぁ。身内に静人のような人がいたら私だったらどうするだろうって考える。虚勢を張ってるように感じる蒔野が今後どう変わって行くのかに興味あり。2014/03/17
三代目 びあだいまおう
173
不慮の死を遂げた人を悼むことだけを目的に全国を旅する静人。悼む対象は、事故や事件に巻き込まれた犠牲者たち。静人はそれらの人々を悼む際に近所に人となりを聞いて周る。誰かに愛されていたのか、誰かを愛していたのか、そして何かをして人に感謝されたことがあったのかを。本作は静人を軸に展開するが、視点は静人ではない。静人を怪しむ新聞記者、余命僅かな静人の母親、そして夫を自ら手に掛け殺した女の3人が視点となり紡がれてゆく。上巻は3人の人物描写で終わり、物語の行く末は見えない。頼むぞ直木賞!期待を裏切らないでくれ‼️🙇2024/07/31
🐾Yoko Omoto🐾
158
映画との相乗効果でとんでもない疲労感に襲われながら上巻読了。自分が直面した過去の様々な身近な人の“死”に対して、その事実を忘れていく自分自身への怒りと言い様のない背徳感や嫌悪感に苛まれ続けた静人。「どうすればその人が生きていたことを忘れずにいられるのだろうか」と自分なりの思いを持って始めた『死者を悼む』行為。身内ならばわかるが、縁も所縁もない見ず知らずの人物の死を悼むという行為にどれ程の意味があるのか、彼は一体何を求めどこに辿り着きたいのかと私は正直彼を理解できないでいる。→2015/02/16
ゆか
115
物語には特に関係しないんですが、個人的に時代設定が気にかかった。現代ではないが、随分昔という訳でもなさそうという事くらいしかわからなかった。物語の内容は自分とは全く関係のない人の死を悼み続ける静人。自己満足と言える行為に人は不審者として扱いながらも興味を持つ。記者の蒔野の母親に対する不躾な態度にはイライラしたけど、ここまで思ってる事をストレートに口に出来るのは、ある意味あっぱれ。そしてなぜ静人が悼む人になったのかは読者も知りたいところ。とにかく静人が早く母親に会う事を願いながら下巻へ!2015/01/24