出版社内容情報
妻を寝取られ嫉妬に狂いながらも、狂態を収めたテープを聞き入り自慰に耽る老作家。哀しく美しく倒錯する性の世界を描いた4篇。
内容説明
貞淑な妻を部下に寝取られ、独り自慰に耽る中年男の妄執。若気の至りの稚児趣味と、その無残な結末。快楽教に堕ちた男女の、狂宴の一夜。ロマンポルノの女王・谷ナオミの、哀しいほどに潔い半生。倒錯した性を描きながらも、なおも飄逸味を失わない傑作四編。緊縛の文豪が老境にして切り拓いた新境地を見よ。
著者等紹介
団鬼六[ダンオニロク]
昭和6(1931)年、滋賀県生まれ。関西学院大学法学部卒業。32年「親子丼」がオール新人杯に入選し、執筆活動を開始。様々な職業に就くかたわら「奇譚クラブ」に投稿した「花と蛇」が評判を呼び、独特の世界観に貫かれた官能小説を次々に発表、SM耽美小説の第一人者となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
100
官能小説の大御所・団鬼六は初読み。元来、官能小説が嫌いではない、花房観音はほとんど読んでいる。また、文庫の解説は先には読まないことにしているが、今作は偶々阿川佐和子の解説を立ち読みで熟読した。爽やかで恥じらいながらの解説と団鬼六の人物評が秀逸。さて、読み始めたら予想以上に面白い。熱愛し合っていたはずの妻が、空想もしなかった不貞を…。哀れにうなだれる夫、自暴自棄におちいる男が切切と描かれている。でも、男の本性も弱点も曝け出しているこの小説は、読友諸姉には読んで欲しくもあり、欲しくもなしの複雑な気持ちです。2018/11/23
KEI
38
読友さんのレビューに興味を持って、初読みの作家さん。(因みに読書さんのレビューの本が本書より面白かった)4編からなる短編集だが、どこまで著者の私小説なのか、フィクションなのか定かではない。元々官能小説や嗜虐、SM小説には縁が無かった。こんな世界があるのかと社会勉強(?)した。が、表題「不貞の季節」で貞淑な妻に浮気されオロオロする男の姿には、思わずこれはコメディだ!と思ってしまった(笑)様々な性癖もエロもグロも全て大らかに包み込み、それが人間なのだと言われた感がある。が、著者の作品はもう読まないと思う。2019/02/21
シュラフ
12
道徳ということを考えれば不倫・愛欲・同性愛は悪である。だが、我々の心の奥底には不道徳への願望がある。往々にして不道徳への妄想に悩まされることがある。この小説は、妻の不倫に悩む中年男、同性愛の美少年、被虐願望を持つ妖艶なる美女、の物語。被虐小説とは言いつつ、団鬼六は根は陽性なのだろう。とても軽やかでコミカル。エログロ小説とはいえ面白い。発行元は文春文庫、解説が阿川佐和子、ということを考えれば、団鬼六の世界もポピュラーになったものだ。道徳が廃れたということで、不道徳もなくなったということだろうか。 2013/12/16
駄目男
11
『薔薇族』だったか何だったか、確か二種類ほどSM雑誌があるのは知っていたが、その手の本は一度も買ったことがない。団 鬼六、宇能鴻一郎と有名なエロ・SM作家の名前しか知らなかった。本屋に行くと、官能小説のようなコーナーもあって、立ち読みなどしている人を見かけるがこれも興味がない。然し、古本市で見つけた自分の体験談を基に、緊縛の文豪が老境に切り拓いた新境地なる小説、また谷ナオミなどに付いても書かれているので、興味本位で買ってみたが、これが笑えるほど面白い。解説には意外な阿川佐和子、これまた興味をそそった。 2020/01/05
カーミン
7
SM小説の第一人者が書く自叙伝的小説。SMという背徳的な言葉やおどろおどろしいペンネームを見て、「どんな恐ろしい人なんだろう」と思いつつ読み進めると、軽妙なペン使いがとても面白い。部下に妻を寝取られたあげくに逃げられたり、若気の至りの男色などなど、官能小説の鬼才も普通と同じように人生を悩みながら歩いていたのだな、と思える作品。2015/10/14