出版社内容情報
自身の出身地から中上健次の故郷まで日本全国五百以上の被差別部落を訪ね歩いた13年間の記録。大宅壮一ノンフィクション賞受賞。
内容説明
中上健次はそこを「路地」と呼んだ。「路地」とは被差別部落のことである。自らの出身地である大阪・更池を出発点に、日本の「路地」を訪ね歩くその旅は、いつしか、少女に対して恥ずべき犯罪を犯して沖縄に流れていった実兄との幼き日の切ない思い出を確認する旅に。大宅壮一ノンフィクション賞受賞。
目次
和歌山県新宮
ルーツ―大阪
最北の路地―青森、秋田
地霊―東京、滋賀
時代―山口、岐阜
温泉めぐり―大分、長野
島々の忘れられた路地―佐渡、対馬
孤独―鳥取、群馬
若者たち―長崎、熊本
血縁―沖縄
旅の途中で
著者等紹介
上原善広[ウエハラヨシヒロ]
1973年大阪生まれ。ノンフィクション作家。自身の出身地である大阪・更池から中上健次の故郷・新宮など日本全国500以上の「路地」(被差別地区)を巡りあるいた『日本の路地を旅する』で、2010年、第41回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。2012年、『「最も危険な政治家」橋下徹研究』(新潮45)で、編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
242
第41回(2010年)大宅壮一ノンフィクション賞。 中上健次が「路地」と呼んだ 被差別部落を 巡る旅である。「破戒」「橋のない川」と 描かれてきた「路地」の 今を 巡る物語 ..心なしか 静逸な印象がするのは、時代の 変遷の影響なのだろうか? 自分の出自を抱えながら、ルーツを辿っていく..兄との再会が心に染みる 現代の「路地」の 物語だった。2017/07/16
ゆいまある
105
「路地の子」の作者が日本全国の路地(被差別地区)を訪ね歩いた記録。エタは肉の解体、皮革に携わり、生涯身分が変わらない。非人は罪人の監視などを行い、何かあれば元の身分に戻る。エタより非人の方が身分が下とされ、仲違いする仕組み。これらは仏教と共にインドから持ち込まれたカースト制度が元になっていると考えられ、なんかもう、仏教もヒンズー教も嫌いになりそうだよ私。差別がえげつないのは私の育った関西。東北はマタギ文化があるから被差別地区が少ない。人間は古来から肉を食べていたと再確認。静かな文体が心地よい。2023/02/15
harass
101
中上健次が自らの出身地の被差別部落を路地と名付けていたのにならい、同じく部落出身の著者による、日本の路地を取材する紀行文。雑誌「実話ナックルズ」に連載されていたものを書き直ししたもの。その土地の情景や歴史、出会った人々の話などのほかに著者自身の路地と家族の話を淡々と語っていく。おおっぴらに語られることのないものは、普通に語るべきか、それとも寝た子を起こしてはいけないのか、非常に難しい。押し付けがましさもなく、落ち着いた語りで複雑な思いに満ちた本。良書。2019/01/11
TATA
72
路地とは被差別部落を指す。これまで比較的タブー視されることの多かったテーマに切り込み、自身のルーツを明らかにしていくという内容には驚きを隠せない。日本の各地に点在する路地にまつわる事実の数々が歴史としての深遠さを示唆しており読み物として非常に重厚なものとなっている。何かしらもの寂しささえ漂うのは筆者の力量か、はたまた故郷を思うあまりに感傷が滲み出たものか。2019/02/21
100
58
被差別部落出身の著者による部落訪問記。日本各地の部落の歴史・成立ちと共に部落に暮らす人々、部落で育った人々の現実と思いを拾い集めるが、それは著者の部落に対する思いと自身の立場の確認作業のようでした。警備や食肉、芸能など生活に不可欠だったり豊かにする役割を担っていた人々に対する差別のシステムに不条理を感じた。2020/12/29