出版社内容情報
チンギス・ハーンの死後、熾烈を極める後継者争いに背を向け、ひたすらモンゴル帝国の拡大に力を尽くした名将バトゥの鮮烈な生涯。
内容説明
チンギス・カンの長子ジュチの子でありながら父の出生をめぐる疑惑を理由に後継者からはずされたバトゥは、暗闘をつづける一族に背を向けひたすら帝国の拡大に力を注ぐ。モンゴル高原から遠く地中海まで遠征し勝ち続けるという空前の壮挙をなしとげ「賢明なる王(サイン・カン)」と呼ばれた男の鮮烈な生涯。
著者等紹介
小前亮[コマエリョウ]
1976年、島根県生まれ。東京大学大学院修了。専攻は中央アジア・イスラーム史。在学中より歴史コラムの執筆を始める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
84
面白かったです。チンギス・カンの孫であるバトゥを主人公にするところからしてマニアックですが、そこがまた渋い。カン一族の歴史を伺えるのも興味深いところでした。暗躍を続ける一族に背を向けてひたすら帝国の拡大に力を注いでいくところからも、12世紀はモンゴル帝国の時代と言ってもいいと思います。モンゴルの勢力はヨーロッパが動くことのできないほどの強さを持っていたのでしょう。モンゴルというと歴史的に馴染みが薄い国ですが、そんな国の歴史を20年以上にもわたり、味わえたことでかなりの充足感を得ることができました。2016/11/19
アイゼナハ@灯れ松明の火
35
知っている話に違う角度から光を当てた話を読むのも娯しいけれど、ほとんど知らなかった英雄の物語を娯しく読めるってのも幸せなものですね。主人公はチンギス・カンの孫バトゥ。西方遠征軍を指揮し、ロシア・東欧諸国を攻略した御方です。本書はモンゴルの西方遠征の様子と、チンギス・カン亡き後の後継争いの様子がバランスよく描き出されていて面白い。女騎士アガフィヤの話や後のエジプトのスルタン、バイバルスとの邂逅なんかはフィクションだろうと思うけど…スパイスとしては悪くない。ベテランの味が出まくってるスベデイが格好いいなぁ。2012/06/17
イトノコ
22
再読。1236年、チンギス・カンの孫であるバトゥは征西の途にあった。血筋故に大カアンの座とは距離を置く彼であったが、中央の政権争いは激しさを増していた。/ブックオフで偶然見つけ、その後歴史小説にハマるきっかけを作った作品(我ながらニッチだ・・・)。西へ西へと領土を拡大する戦記ものと、中央での大カアンの座を巡る陰謀劇とで、二つの軸で物語が展開され読み応えがある。惜しいのはヒロインのアガフィヤが(都合の)良い子過ぎるところか。あとはせっかくバイバルスを登場させたのだから、いずれは彼を主人公とした作品を・・・。2021/04/13
フミ
20
チンギスの孫(長男ジュチの息子)で、ロシア西部~ハンガリーまで略奪の手を広げた「ジュチ・ウルス」の長「バトゥ」を主役にした物語です。登場人物を少なめに抑えて、帝国中央の2代目~3代目までの権力争いと、バトゥ自身の東ヨーロッパまでの侵略を、分かり易く描いてくれています。めったに見かけない時代、地域ですので、興味深かったのですが、主人公の侵略地に「ウクライナ」が含まれていたことで、モヤモヤとしながらの拝読でした。 モンゴル帝国時代の西ロシア、ハンガリーなどを手軽に知りたい方には、結構、良いかもしれません。2024/02/21
シュウ
11
モンゴルへの前知識が全然なく、実在とは思わず読んでました。長い旅をしているような読後感。どっしりとした話でした。モンケとの信頼関係もうらやましく、いいですね。アガフィヤやバイバルスのその後も気になります。そんなこともあり、この話は、継続する流れの、ほんの一部分の話なんでしょうかと思いました。しかし、これを反対の立場から見た場合の物語は、確かに、悲惨なものですね。2012/11/24