文春文庫
あまりにロシア的な。

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  • サイズ 文庫判/ページ数 358p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784167801816
  • NDC分類 293.8
  • Cコード C0195

出版社内容情報

スパイ容疑をかけられ、“ペテルブルク病”にかかり、酔いどれたちの坩堝で芸術・文学と向き合う日々。異色のロシア体験記がここに!

内容説明

ソビエト崩壊から三年後の変わり果てたロシア―スパイ容疑をかけられた過去の悪夢がよみがえり、白夜が狂気に導く「ペテルブルグ病」にかかり、芸術学者らとの交流と思索の日々から「ロシア的なるもの」の真髄にふれた異色の体験記。酔いどれたちの坩堝で全体主義国家の光と闇が浮き彫りになる圧巻の書。

目次

第1章 モスクワの春、あるいは白と黒の境界(冥府下降;水溜りを越えて;空間飢餓)
第2章 石の迷宮、蓮の楽園(ビバ・ペテルブルグ!;酔いどれのモスクワ;幻想のトポスへ)
一九八四―憂鬱な間奏曲「ウリヤノフスク物語」
第3章 魂たちの帝国(黄金の秋を行く;黒いモスクワ;幻想の都)
第4章 記憶の冬、冬の記憶(陶酔の実験;雪の朝、モスクワに…;歴史の影―東欧から)

著者等紹介

亀山郁夫[カメヤマイクオ]
1949年栃木県生まれ。東京外国語大学外国語学部ロシア語学科卒業。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。現在、東京外国語大学長。『カラマーゾフの兄弟』(光文社古典新訳文庫)の新訳がミリオンセラーとなる。『破滅のマヤコフスキー』(筑摩書房)で木村彰一賞、『磔のロシア―スターリンと芸術家たち』(岩波現代文庫)で大佛次郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

413
読み始めた途端に自分が20世紀のロシア(ソ連)の文化に関して如何に無知であり、また関心を向けてこなかったかを痛感することになった。作家ではせいぜいパステルナークとソルジェーニツィンくらい。筆者の主たる研究対象のマヤコフスキーは名前しか知らない。美術方面は壊滅。音楽もショスタコーヴィチとハチャトゥリアン、グラズノフ、しかもショスタコーヴィチ以外は聴いたことはあっても明確なイメージまでは結ばない。19世紀ロシアの方がはるかにましである。もちろん、モスクワやペテルブルクの状況なども雲霞の彼方というありさま。 2022/02/21

中玉ケビン砂糖

95
、じっくりと時間をかけて読んだ、USSR、GPU、KGB、CKなど、ロシアには星の数ほどの略号が存在する、「内面の脆弱さを覆い隠す都合のよい盾」「それぞれの略号に象眼細工のようにはめこまれた『ゲー』のおどろおどろしい響き、それはまさに『国家』のイニシャル、国家の義眼に他ならない」という箇所は成程と思った、ロシアとはまだ言えないソ連崩壊直後のこの凍えるような国は、記号でできたもろい積み木の塔でもあった……、独裁国家が倒れたからといってもちろんすぐに雪解けの春が訪れるわけでもない2015/08/14

tsubomi

8
2017.03.30-05.31:著者がロシアに住んでいるときに見聞きしたことや感じたことをランダムに配置した本。ロシア文学を研究している者として作家を深く掘り下げて追究していく姿勢と考えすぎなくらいの思索の跡がうかがえるエピソードが多く、ときには困惑したり・・・。印象的だったのはヴォルガのデルタ地帯であるアストラハンに旅したときのこと。空気や水の音、静けさまでが実感できそうなほどの風景描写に身を委ねて自分もそこにいるかのような錯覚に陥るときの快感があります。2017/05/31

おとん707

7
タイトルから想像するようなロシア人気質についての随想ではなく筆者が1994‐5年に留学した際の研究に纏わる話が多いので予備知識が乏しい私には難しかった。あえて言えば当時のチェチェン紛争について筆者は「ロシア軍はチェチェン領内に入り…軍事行動を開始したのだ。(チェチェン側は)ロシアとの交渉はロシア軍が領内から撤退した後でのみ応じると宣言した。この宣言を受けて、ロシア軍の猛攻が再開され…」と追想している。いつも力による解決しかないのがあまりにロシア的ということなのか。ロシア人みんながそうではないと思いたい。2022/03/17

ぱなま(さなぎ)

6
大統領候補が暗殺され、地下鉄の入口に貧者が野鳩の群れのように屯する不安定な政情をよそに、文学全集の枝葉末節について討論する文学関係者たちのコントラスト。コラージュという形式を取ることにより、多面的な当時ロシアの表情が抽象絵画のように浮かび上がってくる。レーニン廟の内部についてマレーヴィチの絵画との共通項を指摘した箇所はエキサイティングだった。著者がロシア語に堪能なのは当然といえば当然なのだが、ロシア人たちのウォッカの飲みっぷりに着いて行くばかりか冗談合戦にまで負けじと加わっていくのだから凄い。2015/07/28

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