出版社内容情報
『エイリアン』『大脱走』『ゴーストバスターズ』etc.映画を通じてラカン、フーコーらの難解な術語を分かりやすく説明する、画期な1冊。
内容説明
この本の目的は、(中略)「みんなが見ている映画を分析することを通じて、ラカンやフーコーやバルトの難解なる術語を分かりやすく説明すること」にあります。『エイリアン』と「フェミニズム」、『大脱走』と「父殺し」、「ヒッチコック」と「ラカン」etc.ハリウッド娯楽大作に隠されたメッセージを読み解く、著者の初期代表作。
目次
第1章 映画の構造分析(物語と構造;テクストとしての映画;欠性的徴候;抑圧と分析的知性;「トラウマ」の物語)
第2章 「四人目の会席者」と「第四の壁」
第3章 アメリカン・ミソジニー―女性嫌悪の映画史
著者等紹介
内田樹[ウチダタツル]
1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒。東京都立大学大学院博士課程中退。2011年3月、神戸女学院大学大学院文学研究科教授を退職。現在は同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、映画記号論、武道論。2007年『私家版・ユダヤ文化論』で第6回小林秀雄賞を受賞。『日本辺境論』で新書大賞2010を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
80
個人的にもう読まなくていいかと思う著者であるが、一応目を通したかったでようやく借りる。2001年ごろの講義を膨らませた長めの論と二つの短いエッセイの三本。ラカンの概念などの実例を映画から見るのだが、いまさらのフロイトの性的象徴を出されると、ハア、とため息がでてしまう。まあほかの部分はなるほどと感じるところもあり、売れる著者の語り口の巧さもわかる。知的好奇心をくすぐる暇つぶしの読み物として良いのではないかと。書かれているように、この種類の映画本はあまり無いのでその価値はあるのは確か。2018/07/08
蘭奢待
42
コロナパンデミック以来、自分でもこれほどの映画好きだったのかと怪しむほど映画を見ている。にわか映画好きなのかもしれないが、書籍と同様に良い映画の奥深さに傾倒している。そんな状況のなか、おそらくロラン・バルトの著作のオマージュであろうタイトルに惹かれて読んでみた。かなりアカデミックで、聞いたこともないニッチな作品が多く取り上げられており、残念ながら共感には遠かったが、裏の裏の裏を読んでいく、思考実験的な論考が面白い。2024/08/18
おさむ
40
一読すると難解ですが、エイリアンや裏窓、大脱走、北北西に進路をとれ、ゴーストバスターズ……などおなじみの映画が出てくると、俄然面白くなりました。漫然と眺めていた画面に、監督のこんな代理表象や心理学的なトリックが含まれていたとは、目からうろこでした。「アメリカの男はアメリカの女が嫌いである」など、知的好奇心をくすぐる表現が多く、内田さんの 「筆技」に今回も舌を巻きました。2016/01/29
Gatsby
24
優れた読み手にかかると、小説は作者が意識した以上のことが解釈されるものだが、映画も同じことが言える。この本で素材にされる映画をすべてよく知っているわけではないが、「現代思想の術語を駆使した映画批評の本」ではなくて、「映画的知識を駆使した現代思想の入門書」であるという本書のコンセプトはよく理解できた。「知る」とは「物語る」ことであり、物語抜きの知は存在しない、という言葉をマーク。人間が思考するということは、「お話を一つ思いつく」ということ… またひとつ賢くなったような気にさせてくれる本であった。2011/05/12
たかやん
18
映画について無性におしゃべりしたくなるときがある。先日『エイリアン』を再鑑賞したときもそう。[①アッシュ(アンドロイド)がリプリーを襲う奇妙な手段(丸めた雑誌を口に押し込む)、②脱出シャトルの不要な積荷]疑問だった二点そのまま、本書では映画の本筋とは関係ない"メタ・テクスト"として解説されるので大変有難い。他に大脱走や北北西に進路を取れ・ゴーストバスターズなども。3章のアメリカへの視座は著者ならでは。西部劇映画に登場する女性のほとんどが娼婦、それが何を意味するのか…好物だけにこれから見方が激変しそう。2017/08/17