内容説明
介護地獄に苦しむ元キックボクサー、淡々と「不倫のメリット」について語る女性が漏らした最後の一言、ネット喫茶でたったひとり新年を迎える男、文学賞に落選し続ける四十三歳…。普通の人々の普通の生のなかの瞬間をあるがままに描く21篇。どんな小説よりも鮮烈に現代を映すコラム・ノンフィクション。
目次
東大の時計屋
プレゼント
ひとりの男だけを
殺意の階段
不倫のメリット
『コーラスライン』はここに
リボンと帽子
ワールドカップから遠く離れて
ヨネセンの算数
ギタリスト・ヤマジカズヒデ
親の見合い〔ほか〕
著者等紹介
上原隆[ウエハラタカシ]
1949年、横浜市生まれ。立命館大学哲学科卒。映像製作会社勤務のかたわら、「思想の科学」で編集・執筆活動をはじめる。その後、市井の人々の生き方に焦点をあてたコラム・ノンフィクションを執筆(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
U・ェ・U
16
コラム・ノンフィクションの21篇。淡々と進んでいくストーリー、そして短い文章でありながら、一人一人の日常を垣間見ることができ惹きつけられました。中でも『ヨネセンの算数』が好きでした。2014/02/24
ステビア
15
いつも通り、イイですねえ。解説に技術を持っているのに見せびらかさないところがいい、というようなことが書いてあるけど俺もそう思う。「それで、思いあたったんです。私は、話をきかせてくれた人たちの人生を貯めこむことで、ぺらぺらの私の人生に厚みをもらっていたんだなと。」2014/05/26
カッパ
13
2007年の本。このなかでは32歳のスピリチュアルと占いにはまる女性の気持ちがわかる。私もそんなことろがあったから。ワンルームの駅に近い狭い部屋にすんで。お酒と買ったものを食べて泣いていたあのころ。抜け出せなくてずっとこの生活と思ったら途方にくれそうにあなったのだから。同性愛(女性)を描いた「リボンと帽子」なども少し憧れてしまう。性別にとらわれたくはない。2020/01/10
tom
12
上原隆の連続読み。不幸な話がほとんどなのに、読んでいると、何やら良い気持ちになる。上原さんによれば、インタビューに応じた人たちも、同じらしい。私にとっては、たぶん、自分自身に重ねて、ちょっと微妙に感情移入することができるというところに良い感じを持つのだと思うのだけど、インタビューに応じた人たちは、どういうところから幸せな気分になるのか。いつものことながら、ちょっといろいろ考えてしまうところの多いインタビュー集です。2016/05/28
のほほん
11
市井の人たちにお話を聞いたコラムが21編です。ヨネセンと呼ばれている先生の授業は楽しそうです。自分の頭で考える大人になってくれるかな、子どもたち。劇団四季のオーディションを受けている、他の仕事をした方がと思われる25歳と34歳の男性と33歳の女性。ライブハウスで活動を続けているバンドの40歳のギタリストと近くから彼を見守る女性。文学賞に落選し続けている43歳の男性。がんの治療をしながら残る人のことを思い忙しく生活している女性。世の中にはいろいろな幸せがあり、いろいろな人生があるのだとしみじみ思います。2023/06/14