出版社内容情報
日本大使館に雇われた大竹は、日系人のミミと恋に落ちるが、彼女には人に言えぬ秘密が。開戦前夜を舞台に、男と女を描くミステリ。
内容説明
昭和十六年、ワシントンの日本大使館に臨時雇用された医学生の大竹幹夫は、同僚の若い日系人タイピスト、ミミ・シンプソンに一目惚れする。しかし、ミミは国務省高官のホルブルックが潜入させた女スパイだった―。和平交渉の裏側で進展する謀報活動と、三人の恋愛模様。第二次大戦三部作に連なる長編小説。
著者等紹介
佐々木譲[ササキジョウ]
1950(昭和25)年、北海道生まれ。広告代理店、自動車メーカー勤務を経て、79年に『鉄騎兵、跳んだ』でオール讀物新人賞受賞。90年、『エトロフ発緊急電』で日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。2002年、『武揚伝』で新田次郎文学賞を受賞。また、10年には『廃墟に乞う』で直木三十五賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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koba
34
★★★★☆2019/03/27
まつうら
14
戦時三部作につながる四作目と期待して手に取ったが、これは別の作品だった。 作中でいちばん気になったのは、アイデンティティ拡散症候群のくだり。当時の下手くそな日本外交のやり方は、本当にこれで説明できるのだろうか?と思う。しかしその一方で、アメリカの外交もむごいものだ。資産凍結に石油禁輸ときたら、日本に死ねと言ってるのと同じなのはわかっているはず。そもそも、どうして日本の仏印進駐をそんなにやり玉にあげるのか? 自国のことを棚に上げて、出る杭を打とうとしているようにしか思えない。2021/06/27
乱読999+α
11
太平洋戦争前夜の米国ワシントンDCにある日本大使館が舞台。戦争か和平かの瀬戸際で右往左往する日本人大使館員達。そして米国官僚のスパイ兼愛人の女。また、彼女と若き臨時大使館職員との恋の駆け引き等々は佐々木氏の第二次大戦三部作にも劣らない面白さだった。それにしても昔からの日本の外交音痴、情報分析能力の欠如。国益よりも省益、保身で動く官僚の無能さ。もう少し優秀な、イヤまともな外交官がいたら太平洋戦争は避けられたのでは、と思ってしまった。2020/09/10
さっと
11
『ベルリン飛行指令』にはじまる、佐々木譲の第二次世界大戦秘史三部作に連なる作品ということで、たいそう期待しながら読んだのですが、日米開戦前夜のワシントンを舞台にした和平交渉、情報戦線に女スパイをめぐる恋愛模様が冗長に絡んできて正直退屈しました。戦争と和平がもたらす利益を計算して動くそれぞれの立場の思惑と、正史から見たら脇役である本編の主役たちの歴史への交わりと、開戦までのカウントダウンと、よくできた物語ではありますが、三部作の稀に見る緊張感、冒険譚、男臭さには及ぶべくもない。2017/07/02
2ndkt
8
日米開戦前夜の日米交渉をよく調べた上での小説。現代を舞台にした小説は、ある程度自由に物語を展開できるが、歴史小説はある程度史実に即して物語を進めないといけない。米国務省高官とスパイとして日本大使館に送り込まれた日本人の父を持つ女性、日本大使館でアルバイトをすることになった日本人留学生の三角関係と開戦を阻止しようとする日米双方の尽力、この両方が飽きさせることなく、むしろ緊張感を高めながら、物語が進んでゆく。著者の構想力に脱帽。2016/02/11
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- 和書
- 十五少年漂流記 角川文庫