感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
50
無残で、悲しくて、涙した。幼馴染だった二人のアドルフ。戦争と国と人種、そして私怨が友情を引き裂いた。手塚先生ご自身は、大いなる怒りを持ってこの作品を描き上げたに違いない。憎しみを量産する戦争は、本当に無意味だ。あまりにも惨い。本当に・・・。2015/11/15
AICHAN
35
再読。ゾルゲ事件のゾルゲなども登場して、物語は複雑に絡み合ってくる。カウフマンの想い人を預かった神戸のカミルはその子と恋仲になる。日本はついに太平洋戦争に突入する。ドイツではカウフマンが出世してSD(ナチス親衛隊保安諜報部)となりユダヤ人虐殺に手を初める。ゲシュタポの要請によりカウフマンは日本に行くことになる。任務はヒトラーの秘密を暴く文書の奪還で、峠という男の周辺を探れとのことだった。その帰途、カウフマンは母親が日本人と再婚したのを知る。その相手とはゲシュタポに弟を殺されたジャーナリストの峠だった。2021/11/27
fu
21
幸せになれず、誰ひとり救われない悲惨な結末にも関わらず、峠草平は言う。「人間てのはすばらしい」どうしてこの決してハッピーエンドではない物語で、そう前向きに言えるのか。読むだけでも疲れるのに、残虐な世界を淡々と描ける手塚治虫は、相当強い人なのだろうと思う。いかなる状況下でも、常に前向きでいるには挫けない強さが必要だ。2015/11/14
hamham
19
表紙はヒトラーだが、これはただのナチ批判の物語ではない、WWⅡの物語ではない。ヒトラーでさえ、狂言回しの一人にすぎず、歴史の奔流に呑みこまれ退場していく。むしろWWⅡ編は長い序詞で、私達が対峙すべきはその後に描かれている部分にある。イスラエルとパレスチナ…。迫害されし哀れな民族ユダヤ人が、逆手で持ってアラブ人を迫害していく。お膳立てしたのは米英。そしてつい先日、時の米大統領が「聖地はユダヤ人の物」と太鼓判を勝手に押した。この話が描かれたのは30年以上前、30年後更に解決から後退するとは漫画の神も思うまい。2017/12/11
キビ
17
3人のアドルフが、どこかしらで繋がっている。その繋がりは決して、明るく楽しいものではなかったけれど。どうして他を排除しようとするのか。怒りもあるけど虚しさも残る。正義は時代背景やそこに生きる人々によって異なり、また変化し、絶対的なものはない。そんなことを語りかけられた物語だった。2018/05/03
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