内容説明
「これは奇跡に関する物語だ。」―洪水に苦しむ人々を救うため、愛する妻が“亡者”と交わした取引とは?鮮烈な余韻を残す表題作ほか、謎の圧死をとげた伯父の家での不思議な邂逅を描く「やもりのかば」、裏の空き地で少年が体験する不条理「夏の軍隊」など、美しく奇想天外な13の物語。
著者等紹介
佐藤哲也[サトウテツヤ]
1960年静岡県生まれ。成城大学法学部法律学科卒業。1993年『イラハイ』で第5回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ざるこ
49
13短編。すごく好みの作品だった。生真面目な文体なのに奇抜な発想とユニークな表現。異世界というほど離れておらず幻想的というほど美しくはない。登場するのは異形の動物や昆虫、亡者、地平線まで続くぬかるみだったりするのだから。幻覚ではなく、くっきりとした非現実的世界。表題作は世界の終わりの圧倒的絶望を与えながら、まるで残酷童話のような展開。「つぼ」に至っては便器が壺であり、その謎について哲学的に語るのだけど笑えてしょうがない。もれなく絶望が襲うのに冷静に対処する主人公たち。不思議で怖くておもしろすぎる。最高。2019/07/14
はらぺこ
43
何かの比喩かなぁ?とか色々考えながら読んでたから疲れた。 表題作の『ぬかるんでから』はダークな童話みたいで好き。『夏の軍隊』は何と無く微笑ましくて好き。『やもりのかば』はオバQとかを想像した。 多くの作品の所々で『ごっつええ感じ』とか『VISUALBUM』のコントを思い出した。誰でも笑える方やなくて、キャシィ塚本みたいなイタイ方のコント。『巨人』『墓地中の道』は比較的ベタで、『祖父帰る』『おしとんぼ』はイタイ方のコント。2011/03/08
えっくん
36
★★★☆☆伊坂幸太郎氏のエッセイで紹介されていた13の短編集で、亡者や巨人、怪人だけでなく天井を歩くカバやチェーンソーを振り回す巨大なキリギリスなどが各編で登場するなど、あまりにシュールで奇想天外な物語でした。精緻な文体に加え、独特の世界観に圧倒されそうでしたが、どの作品にも突如としてやってくるぶっとんだ設定は凡人の私の理解をはるかに超越しておりました。この辺りは、巻末の解説で伊坂さんが「一気に読むよりはインターバルをおきながら1話1話じっくり味わいながら読んだ方がいい」と言及されていたのが救いでした2018/05/12
福猫
30
はっきり言ってこの手の作品はダメです。生理的に受け付けない。作者の自己満足としか思えず、最初の2作品で拒否反応が徐々に表れだし、ページをめくるのが苦痛でたまらない。行間を読めと言われても、言葉の美しさを堪能しろと言われても、無理!解ったふりも出来ないし、したくない。友人もこの手の作品は苦手なはずなので、なぜこの作品を購入したのか解らん。どうも伊坂幸太郎推薦の帯に騙されたのではなかろうか。とにかく…今年最大の苦痛作デシタ。2013/11/21
アメマ
29
なんですの?これ。チンプンカンプンと表裏一体の作風。同時に狂気とくだらなさを併せ持ち、異質な幻想世界へ誘う。SF、ファンタジー、ホラーと様々な要素が組み込まれた短編が13あるのだが、兎に角、話がブッ飛んでいる。シュールと一言で片付けるのもおこがましい。何でこうなるんだろう?何て考え始めたらこの作品はもう無理である。これは空気感で楽しむ本だ。まさにブルース・リーの"あの名言"の通り。解説の伊坂幸太郎氏がこの作品の一気読みは避けた方がいいと言うのも頷ける。個々の短編が濃厚過ぎるから(笑)☆2.02015/12/23