内容説明
同僚にプロポーズされたのを機に、不倫中の上司と別れる決意をした朋絵だったが、最後のデートを後輩に目撃され…。男と女の間に流れる、もはや愛とは呼べないくろぐろとした感情、女と女の間の、友情とは呼べない嫉妬や裏切り、優越感。女たちの心に沈む思いを濃密に描きだした、八つの傑作恋愛短篇。
著者等紹介
唯川恵[ユイカワケイ]
1955年、金沢市生まれ。銀行勤務等を経て、84年「海色の午後」で第3回コバルト・ノベル大賞を受賞し、作家デビュー。さまざまな女性たちの心に寄り添う恋愛小説、エッセイで多くの読者の共感を得ている。2002年「肩ごしの恋人」で第126回直木賞受賞。08年「愛に似たもの」で第21回柴田錬三郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
103
男女間の揺れが苦しかったです。愛とは呼べないドロリとした感情が流れているように感じました。同時に描かれる女性の闇が胸を締めつけてきます。ゾッとするような怖さを秘めているように思いました。妬みや自尊心といった人に知られたくない感情をあぶり出し、心をざっくりと抉っている。女性の心の奥に潜む心理を濃密に描き出しています。息が止まりそうな感覚に陥りました。2016/04/07
もぐたん
74
うーわ!これは背筋が凍る。どれもこれも頭を抱えたくなる結末の8作品。これは恋愛小説なんかじゃない。女と女の戦いの物語だ。エピソードのそれぞれに戦慄したり、共感したり。女性なら誰しもストレートに刺さるに違いない恐怖の短編集。★★★★☆2022/07/29
miww
72
女の怖さ、いやらしさを描いた8つの短編集。久しぶりの唯川さん、この作家さんの書く「女」はいつもリアル、今回も「こんな人いるいる!」が満載。どれもザワッとしたり、イラッとするラスト。「あね、いもうと」のオチがゾッとしたけどいちばん面白かった。2016/09/10
アッシュ姉
71
遅ればせながら、最近読み始めた唯川さん。一冊目で追いかけたい作家さんとなり、二冊目の本書でハズレなしの作家さんへ浮上。もはや安定の面白さと言いたい。短編なのでスキマ時間に楽しもうと思ったが、読み出すと止まらずにあっという間に読了。自信過剰で高慢な女や自意識過剰な女が凍りつくのをみて楽しんでいる私はイヤな女と思いつつ、フフっと笑えて後味が悪くならない上品さも魅力。女性同士の駆け引きの怖さが見事な「女友達」「無邪気な悪魔」がとくにお気に入り。2017/05/31
森の三時
39
大人向けでしょうか。さすがに、清く、正しく、美しくという幻想は卒業しておりますが、女性のいろんな顔を見せられたような気分です。どの話も女の企みの怖いことといったらありゃしません。私のジャンル分けでは恋愛小説ではなく、女という生き物に関する物語かと思います。ドラマで誰か演じたらどろどろした内容になると感じますが、不思議と品のある文章、表現も洒落ています。2018/12/24