内容説明
浪人生の高岡裕一は、奇妙な断崖の上で3人の男女に出会った。老ヤクザ、気弱な中年男、アンニュイな若い女。そこへ神が現れ、天国行きの条件に、自殺志願者100人の命を救えと命令する。裕一たちは自殺した幽霊だったのだ。地上に戻った彼らが繰り広げる怒涛の救助作戦。傑作エンタテインメント、遂に文庫化。
著者等紹介
高野和明[タカノカズアキ]
1964年東京都生まれ。1984年より、映画監督・岡本喜八氏に師事し、映画・テレビ・Vシネマの撮影スタッフとなる。89年に渡米し、ロサンゼルス・シティカレッジで映画演出・撮影・編集を学ぶ。91年に同校を中退後、帰国して映画・テレビなどの脚本家となる。2001年『13階段』で第47回江戸川乱歩賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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青乃108号
417
これは俺の様な鬱患者には辛い本だった。しかもひたすら長い。100人の自殺企図を思いとどませる、幽霊人名救助隊の話。自殺企図者の大半は鬱病をわずらっている事になっている。救助隊は彼等に精神科にかかる様説得、精神科に行かせる事が出来れば救助成功って。そんな簡単な物じゃないよ、鬱病って。完治はしないよ、鬱病って。薬でなんとか症状を軽快させられはするけど、辛いよ、ずっと。何とか義務感だけで読了はしたけど、読んでる間はずっと辛かったよ。また今日も帰ってあの辛い本を読まなきゃいけないのかって。やっと開放されたよ。2023/10/22
ehirano1
401
読後はハートフルを感じるも扱う題材が重過ぎ。しかしこれが良い!そしてこれこそが著者の真骨頂であり熱量は十分に伝わってきます。因みに、「自分が他人を救うことで自分自身も救われる」ことに気付かされたのは僥倖でした。2023/11/19
HoneyBear
357
不運や社会の不条理の中でも、責任感が強くて頑張りすぎている人たちが追い込まれていく心の闇。精神的な疲れや苦しみを癒やすべく幽霊たちが大活躍。ふとした「気づき」や些細な人との触れ合いが人を別人に変えうることに気付かされてくれる温かい人間賛歌。物語の締めも良い。天国に行くとはそういうことだったのか!2016/03/01
修一朗
295
くすっと笑えて、ほろっとできて、読んだあとちょっと元気になれる、エンタメ小説でした。あふれる[自殺はいかん]というメッセージ。人物設定が秀逸で昭和ギャグが笑えます。死刑制度を扱った[13階段]とトーンが違っていて、最初は引き出しの多い作家さんなんだなと思ったのですが、この本だって真正面から[自殺]という社会テーマに取り組んでいて、伝えるためにこの形を選んでいるということが理解できました。ページ数が多かったのは具体的なケースを数多く紹介したかったのでしょう。面白かったし、メッセージ伝わっていると思います。 2014/06/14
bookkeeper
286
★★★☆☆ 初読。4人の自殺者の霊が、神様から100人の救済を命じられて人命救助隊を結成する。 現世の物には物理的に影響を及ぼせない代わりに、人の気持ちに作用してある程度操れるとか、自殺するリスクを見て取れるなど、特異な力と制約条件があり、程よい緊張感を持って読めます。どんなに無茶しても死なない、というのは面白かった。 人が死にたいと思い詰める理由の、何と様々なことか。語り口は軽妙ながら、ずっとそれらにどっぷり浸るので時々しんどくなります。取り敢えず、何とか生きていられる幸せを感じないとなぁ…2018/09/19