内容説明
「いらっしゃーい」。伊良部総合病院地下にある神経科を訪ねた患者たちは、甲高い声に迎えられる。色白で太ったその精神科医の名は伊良部一郎。そしてそこで待ち受ける前代未聞の体験。プール依存症、陰茎強直症、妄想癖…訪れる人々も変だが、治療する医者のほうがもっと変。こいつは利口か、馬鹿か?名医か、ヤブ医者か。
著者等紹介
奥田英朗[オクダヒデオ]
1959(昭和34)年、岐阜県生まれ。プランナー、コピーライター、構成作家を経て、作家に。2002年に『邪魔』で第4回大薮春彦賞受賞。2004年に『空中ブランコ』で第131回直木賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 3件/全3件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
1236
この伊良部一郎博士先生、ハチャメチャだけど伊達に医学博士じゃないような気がします。「”・・・元来あるものをなくそうなんてむだな努力なの。それより別のことに目を向けた方がいいわけ”(p12)」に始まる数々の医師の発言から(読者である私も思わずハッとしました)、患者自身が何かに気付き(これって大切ですよね)、ドラッグフリーで治癒していく。これは医師自体が理性、世間、常識から解放されており、人間という動物らしく自由に生きており、何より”孤独のチカラ”を有しているからでないかと思いました。2016/04/12
ヴェネツィア
1113
精神科医・伊良部シリーズ3部作の第1巻。次の『空中ブランコ』などに比べると、伊良部はまだ普通。本書は5つの連作短篇から成るが、小説としては最初の「イン・ザ・プール」の出来が一番いいようだ。いずれの物語においても、患者たちの悩みはそれぞれの置かれた環境の中での関係性の不整合にあるのだが、伊良部はそうしたことから敢然と超越している(あるいは、大きく逸脱しているというべきか)。そして、その齟齬こそが物語世界を生み出しているのである。その意味では最後の「いてもたっても」は自己完結的でやや異色か。2023/09/07
再び読書
1020
本のカバーから少しホラーも入っているかと思えば、意外に面白い小説でした。人の深層心理から生じた過度な不安を、同調したり逆に煽りこれで直るの?と途中からは信じる事すら諦めさせる医者。結局それなりの収まり方に落ち着く。深い解決方法の様な、デタラメなのか、摩訶不思議な結末。それでいながら爽快感もある不思議な読後感を残す作家でした。何冊か読んで、はまるか諦めるかどうなるか楽しみです。2012/11/11
Die-Go
810
図書館本。風変わりな精神科医伊良部の下に集うまた風変わりな患者達の短編集。伊良部の特異さは風変わりと言ったもので収まらず、ある種本人が患者なのではないかと感じさせるほどの変人。だがその変人がなんとなく患者達を癒して(?)しまう。奥田英朗独特の読みやすさでグイグイ読めてしまう。★★★★☆2016/03/01
扉のこちら側
775
初読。なんだこの医者と思いながら読み始め、なんだったんだこの医者と思いながら読了。確かに医者の変わり者率はそれなりに高いと思うが、ここまで漫画的に変な医者のキャラをよく考えたなぁと。日常によくある心身症を非日常的にデフォルメしてうまく書かれているのがおもしろい。ああ、2話目の病気は日常的ではないけれど。2013/02/21