出版社内容情報
小説家志望の夫は、雑誌記者の妻に対し嗜虐の炎を燃やす。その狂気の行く末は? 「新開地の事件」「留守宅の事件」ほか全四篇収録。
内容説明
小説家を目指す夫と、その夫を支えようとする雑誌記者の妻。原稿を採用されない夫の心は次第に荒み、修羅をさまようようになっていく。やり場のない憤懣は、妻への異常な追及へと変わり、次第に狂気へと―。二人の行く末は?「新開地の事件」「密宗律仙教」「留守宅の事件」、男と女の事件四編を収録。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909(明治42)年12月、福岡県企救郡板櫃村(現・北九州市)に生れる。53(昭和28)年「或る『小倉日記』伝」で第28回芥川賞を受賞。56年、それまで勤めていた朝日新聞社広告部を退職し、作家生活に入る。63年「日本の黒い霧」などの業績により第6回日本ジャーナリスト会議賞受賞。67年第1回吉川英治文学賞受賞。70年第18回菊池寛賞、90年朝日賞受賞。92(平成4)年8月死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
あなご
30
男と女の事件四編を収録した短編集です。一番印象に残った作品は『密宗律仙教』です。宗教団体の誕生から成長まで描かれていて宗教の怖さを感じると共に作者の知識の深さに感心しました。2014/01/14
yokmin
26
昭和40年代の物語集。「新開地の事件」は東京の近郊、武蔵野が住宅地に開発されていく過程の描写が興味深い。しかし、最も衝撃的だったのは清張の小説ではなく、阿刀田高の解説である。「点と線」が大変な人気を集めたばっかりに、以後推理小説に深入りしたが、「推理小説の本当に良い書き手だったのだろうか」と疑問を挟む。推理小説に出会わなかったら、「社会と人間の真実をえぐることにひたすらな、トリックなどに無駄な気をつかわない普通の小説の大名作を残したのではないか」と。そう言われてみれば・・2018/05/20
シュラフ
23
「証明」 「新開地の事件」 「蜜宗律仙教」 「留守宅の事件」を収録。本筋からはずれるのだが、真言密教の教義というのはよく分からない。今回 「蜜宗律仙教」を読んでみて、それが少しばっかり分かったような気がする。真言密教には男女行為を思わせるものがある・・・空海が唐からもってきたインド的仏教思想の中には愛欲肯定の考え方がある・・・人間の本能を抑圧する協議は不自然・・・凡人に性の煩悩を抑える規律を強いるのは道理に合わぬ・・・性の現実をあるがままに受け取ることだ。こういうことなのだろうか。2015/02/10
紫の煙
9
4編を収めた短編集。新興宗教を扱った作品、アリバイ物、男女のもつれとバラエティに富んでいる。地味ではあるが、手堅い印象で、さほど古臭さも感じない。2014/08/15
コットン
7
4話収録の短編集です。 最後の「留守宅の事件」は森村誠一さんが著書で、秀作だと書かれていたので読みたくて探すとこの短編集にありました。面白かったです。 「新開地の事件」を一番ハマって読みました。前半の奇妙な静けさと後半との落差、 古い土地の陰気な習慣とそうではない現代、 愚かな女。 近代化の波に揉まれながら代々の土地を受け継ぐ家族の葛藤。でも問題はそこじゃないの?っていう展開。人間の性質が絡む暗い話。 「蜜宗律仙教」は呆れてしまったけど、宗教に興味が持てないので、駄目押しされました。2019/10/28




