内容説明
イランでゾロアスター教の遺跡を踏査した通子は、帰国後、飛鳥文化とペルシア文明の関連を考察した論文を発表する。斬新な仮説への反響とは?的確な批評を寄せつつ消息を絶った海津の行方と運命は?骨董品取引の裏側や学界の学閥主義など人間の業の深さや心の闇をも鋭く描いた清張古代史ミステリーの代表作。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909(明治42)年12月、福岡県企救郡板櫃村(現・北九州市)に生れる。53(昭和28)年「或る『小倉日記』伝」で第28回芥川賞を受賞。56年、それまで勤めていた朝日新聞社広告部を退職し、作家生活に入る。63年「日本の黒い霧」などの業績により第6回日本ジャーナリスト会議賞受賞。67年第1回吉川英治文学賞受賞。70年第18回菊池寛賞、90年朝日賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chantal(シャンタール)
83
元は新聞の連載小説だったらしいが、読者から「難しすぎる!」とクレームがあったらしい。然もありなん。半分くらいは論文なので、私も読むのにかなり時間がかかった。清張先生ご本人も論文が主役と言ってたらしい。斉明天皇が実はゾロアスター教を信仰してたのではないか、中国や朝鮮を通らず、ペルシアから直接日本に入った文化があったのでは?と言う清張先生の学説がそのままこの本となったのだ。絹の道ならぬ「火の路」があったかもしれないなんて、本当に歴史ロマンを感じる。古代の事は誰にも分からない、自由な発想での仮説が楽しかった。2021/07/05
Shoji
47
「この本の主人公は論文である」と解説に書かれていました。なるほど、今もって解明されない飛鳥の謎の石造物に関する一考察が多くのページ数を占めています。その論文は全て、松本清張の創作であることに驚かされます。だらだらとクソ難しいことを書き並べて退屈させることはありません。もちろん、主人公として史学を学ぶ女史が存在し、いい仕事をします。松本清張の凄さを思い知った物語でした。2020/09/17
姉勤
29
飛鳥とゾロアスター教とのつながりを訪ね、イランに向かう若き女性学士の主人公。イラン革命とイラン・イラク戦争以前の彼の地は、貧しいながら活気溢れる。そのイラン取材と自論展開に興が乗り、肝心の物語のミステリには最終盤まで焦点がぼやけ、点と線がつながらず、結局わるい奴らでしたとは。個人的には役小角のペルシャ人説、密教(仏教)とゾロアスターの親和性、バラモン教のソーマは麻薬成分を含むハオマ酒では?などの思考遊びの刺激は面白かった。2019/08/31
Galilei
19
当地は、百舌鳥古墳群、最古の竹内街道、渡来人の鉄器工作跡に囲まれ、本書の二上山や葛城山を毎日眺めて、日常が古代史遺構の中なので清張論にも手が伸びる。主人公の論文が清張の主張で、酒船石が一神教の祭壇との論説。日本書紀や竹簡にも記録はない。ただ一つ言える事は、酒船石やキトラ遺跡など多くは小高い丘や山にある。これは、後の飛鳥京では豪雨の洪水が南の山地から耳成山近くの宮城に流れ込み多大な被害だったので、祭祀や王朝に関わる高貴な物は高地を選んだのでは。▽盗掘と纏わる人間関係は、連載の推理小説の為サービスに思えます。
しーふぉ
19
イランの旅がいつの間にか終わっていた。火の路とはゾロアスター教の来た路なんですね。それ以外の理由もありそうですが。2019/04/08
-
- 和書
- 妻への詫び状