内容説明
深夜、東京の閑静な住宅街に一台のトラックが突っ込んだ。やがて起きる二つの殺人事件。事故と事件をつなぐ奇妙な鍵を炙り出す表題作。併録は人気ドラマの原作。上流家庭を気取る一家に家政婦として入った信子。どんなに表向きは幸せそうな家庭にも必ず不幸はあり、それを発見するのが信子の秘かな愉悦だった。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909(明治42)年12月、福岡県企救郡板櫃村(現・北九州市)に生れる。53(昭和28)年「或る『小倉日記』伝」で第28回芥川賞を受賞。56年、それまで勤めていた朝日新聞社広告部を退職し、作家生活に入る。63年「日本の黒い霧」などの業績により第5回日本ジャーナリスト会議賞受賞。67年第1回吉川英治文学賞受賞。70年第18回菊池寛賞、90年朝日賞受賞。92(平成4)年8月死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
60
「事故」は男達の言い分に呆れるばかり。そしてそんな男に只管、侮られた挙句、やっかみと口封じで殺される浜口久子さんに悲哀を感じる。多分、彼女は事実を知って動転して信念を曲げてでも記述を変えたのだと思うと余計に。「熱い熱」は火曜サスペンス劇場でお馴染みで、今もパロディが作られる『家政婦は見た!』の原作。家庭の火種に態と発火物を仕掛る信子が本当にいい性格をしている(笑)特に雇い主の春子から陰口を言っているのを聞いて復讐心を燃やす場面は似たような気持ちを抱いた事があるので複雑。しかし、彼女は間違いを一つ、犯した。2024/01/13
おいしゃん
43
表題作と、「家政婦は見た」の原作である「熱い空気」の2編。どちらもヒヤリヒヤリさせられつつ、先が気になり止まらない面白さ。2018/07/12
ぶんぶん
32
【図書館】久しぶりに「松本清張」に手を出した。 「東京バンドワゴン」の繋ぎっていう役だったのですが、面白かった。 表題は単なるスリップ事故があれよあれよと言う間に「殺人事件」に繋がる。 登場する人物の繋がりが凄い、こう絡まって来ると清張の手際の良さだと思う。 「熱い空気」テレビドラマの「家政婦は見た」の原案という事で興味津々。 ドラマと違い、人間関係が緻密に書かれている。 因果応報とはいえ、ラストは凄い事になっている。 家政婦なんて大なり小なり、こういう処があるよね。 家政婦、雇えないけど・・・(笑)2022/12/09
空猫
28
小川洋子サンのお薦め『熱い空気』目当てで。観てないが「家政婦は見た」の元ネタだそう。端から見れば幸せな家庭も何処かに不幸を抱えているのだろうが、家政婦(部外者)の視線は画期的だったろう。頼りにされても人格無視で酷使されれば悪意ある仕返しも仕方がないのか(!?)。家政婦の圧勝かと思いきや、ラストシーンには唸らされた。松本清張センセイもこういう話を書くのかぁ。表題作の『事故』は、いつもの人間ドラマ+推理小説。散らばった幾つもの点が線になっていく様を堪能。やはり不倫はいかん←2020/02/26
ひなきち
25
『家政婦は見た!』の原作「熱い空気」を読みたくて手にとった。信子の卑屈さや意地悪さに共感したくはないが…。隠しもっている生々しい感情を暴かれる気がした(キャー)。展開が二転三転して面白い!表題作の「事故」もまたしかり。松本清張のミステリーをたっぷり堪能した。2019/02/15