内容説明
起案書に30以上もの印鑑が押され、最後に法務大臣が執行命令をくだす日本の“死刑制度”。「人殺し!」の声の中で、死刑執行の任務を命じられた刑務官が、共に過ごした人間の命を奪う悲しさ、惨めさは筆舌に尽くしがたい。死刑囚の素顔、知られざる日常生活、執行の瞬間など、元刑務官だからこそ明かすことのできる衝撃の一冊。
目次
第1章 二〇〇一年死刑執行はかくなされた
第2章 これが現在の処刑だ
第3章 拘置所の日常と死刑囚の生活
第4章 初めて明かされる死刑囚監房の真実
第5章 殺人犯、その裁きの現場
第6章 死刑を執行するということ
著者等紹介
坂本敏夫[サカモトトシオ]
昭和22(1947)年生まれ。法政大学法学部中退。昭和42年、大阪刑務所看守を拝命し、以後、神戸刑務所、大阪刑務所、東京矯正管区、長野刑務所、東京拘置所、甲府刑務所、黒羽刑務所、広島拘置所等に勤務。平成6年3月まで法務事務官として奉職。映画「13階段」のアドバイザーも務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kinupon
61
今もどこかで必ず執行されている死刑。刑務官の辛さや悲しさなど、読みごたえがありました。2019/04/23
hatayan
57
元刑務官だった著者が死刑囚の日常や死刑執行の内幕を生々しく回想。 被害者の遺族と死刑囚の心情を知る刑務官にかかるストレス。ようやく立ち直った死刑囚に刑を執行するときに刑務官が覚える矛盾と葛藤。暴力団員に迎合する拘置所の職員。平易な記述では表現しきれないテーマを描くために、死刑執行の様子は漫画で、拘置所内の人事や内部事情を小説で綴るという異例の構成となっています。 著者は抑止力としての死刑に意義を見いだしつつ、国家による処刑には反対する立場。死刑制度を理性的に考えるための参考図書として押さえたい一冊です。2019/12/10
ノンケ女医長
31
これ以上に分かりやすく、読者に深い読後感を与える作品はないと思う。管理者、職員、そして当事者の視点を取り入れて、生々しい描写もあり、相当に読み応えがある。死刑執行の難しさ。著者の意見提起もあり、何度も読み返したい貴重な作品。2024/03/30
Ayumi Katayama
24
著者は、死刑執行の経験もお持ちの元刑務官である。何冊か拝読したことがある。既に知っている内容もあるが、それでも驚くことは多々ある。最たるものはやはり法務省のこと。『政府の姿勢や意見等というのは役人個人のものなのだ。』で始まる。この一言をもってしても驚愕するが、死刑廃止派が外国に働きかけ政府に外圧をかけようとしたことに対して次のように語る。少し長いが引用させて頂く。2019/12/21
フジコ
23
死刑囚の最期に関わる人たち。被害者家族はもちろん、判決を下した裁判官も執行の判子をつく法務大臣もその場には居ない。何年も同じ空間で過ごし、時には何かしらの感情が芽生えるかもしれない。刑務官は、そんな彼らの首に直接縄をかける。想像しえない重さと苦悩。外堀からは、国家が「人を殺す」行為を合法化している罪について、上辺だけしか論じることはできない。知りたい。死刑囚は堀の中で何を思い、死刑台に立ったのか。問いたい。死刑が在る意味を。生々しくも克明に描かれたこの本から、正しく考え続けたい、そんな気持ちにさせられた。2016/11/22