内容説明
放課後の理科室で古びた図鑑を見つけた少年は、不思議な夜間学級に出席する―ファンタジー短篇「ゾロ博士の鉱物図鑑」を収録。紫水晶、白雲母、月長石など数々の鉱石から生まれた物語は、葡萄狩り、天体観測、寝台特急と場面を変えながら美しく煌いている。著者秘蔵の鉱石写真やショップ案内も充実したコンパクト決定版。
著者等紹介
長野まゆみ[ナガノマユミ]
東京生まれ。女子美術大学卒業。1988年『少年アリス』で文芸賞受賞。文芸各誌で活躍を続けながら、自らの著書の装画も手がけている
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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❁かな❁
203
長野まゆみさん初めて読みました!とても綺麗な鉱石の写真と共に鉱石から生まれた幻想的で美しい物語の数々が収められています*それぞれの鉱石の表現がとても素敵♪葡萄露、氷柱糖、翠蜜など。そしてそれぞれの鉱石についてお菓子のように美味しそうな表現が具体的にされていて「あれ?鉱石って食べられる物だったんだぁ!!」って思わず思ってしまいましたが読了後、皆さんの感想拝見させてもらったら、やはり架空でお菓子のように例えられてるんですね(笑)最初の『ゾロ博士の鉱物図鑑』が素敵でこの世界に自然に心地よく誘ってくれました♡2016/01/03
mae.dat
196
鉱物を軸にした物語は可能と言うか、ある程度の親和性があると思っておりまして。鉱物と一言で言っても様々な側面を持って居ますからね( ¨̮ )。本書では、石の選定がナイスチョイス。宝石の当落線上かそれ未満の、名のつく石のに付いて、想像の翼を目一杯に広げて書かれたお話が収録されているの。『銀河鉄道の夜』を彷彿とする様な世界観。ただね見開き2ページと、鉱物の嘘っこ解説1ページで出来ていて、ストーリーを咀嚼するには余りにも短すぎるきらいがあるかなぁと。そこが少し残念。でも石の愉しみ方の新たな一面を教えて貰いました。2021/08/10
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
178
これは長野作品のエッセンスが詰まった詩集のような、作品ノオトのような。美しい鉱石の写真とその効能がなんとも美味しそう。「螢玉ー螢光をおびているので、夜間の採集に適している。/糖度が高いので煮溶かして/ジュレにするとよい。猫族の情報によれば、半夏生の祭りには、欠かせないお菓子」だとかにほかの作品を想ってふふっとなり。「夜半過ぎ、月の煌く気配がして睛を醒ました」だとか「暁に糸を垂れ銀の魚を釣る。同じく晩霞に糸を垂れ、黄金の魚を釣る」だとかの言葉そのものや情景の美しさにほうっとため息。眠れない夜に開きたい。2018/12/15
青蓮
119
ハードカバーで読んでいたのですが文庫版が出たので再読。美しい鉱石の写真と共に添えられた物語がため息が出るほど素敵。そして美味しそう。本当に食べられるような気がしてくるから不思議。長野さんの影響を強く受けて、鉱物図鑑など買い求めたこともありました。色の美しい鉱石は眺めてるだけで至福。2015/08/11
rico
101
何といったらいいんだろう。放課後の理科室から始まる不思議な世界。美しい写真、添えられた摩訶不思議な解説と短い物語。手のひらの上で、ポケットの中で、少年たちは繰り返しその感触を確かめるのだろう。そういえば氷砂糖は水晶に似ている。きらめく鉱石たちは、なめらかなアイスクリームや透明なソーダ水がよく似合う。輝きとぬくもり。ささくれだった心を浄化してくれるような、至福のひとときでした。2021/12/25