内容説明
欲しいもの…子ども、周りの称賛、やる気、私の人生を変えるドラマチックな何か。でも現実に私の目の前にあるのは、単調な生活に、どうしようもない男、中途半端な仕事…。高円寺、荻窪、吉祥寺、東京・中央線沿線の「街」を舞台に、ほんの少しの変化を待ち望む女たちの姿を描いた、心揺さぶる八つの短篇。
著者等紹介
角田光代[カクタミツヨ]
1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。90年「幸福な遊戯」で第9回海燕新人文学賞、96年『まどろむ夜のUFO』で第18回野間文芸新人賞、98年『ぼくはきみのおにいさん』で第13回坪田譲治文学賞、『キッドナップ・ツアー』で99年第46回産経児童出版文化賞フジテレビ賞、2000年第22回路傍の石文学賞を受賞。03年『空中庭園』で第3回婦人公論文芸賞、05年『対岸の彼女』で第132回直木賞、06年「ロック母」で第32回川端康成文学賞、07年『八日目の蝉』で第2回中央公論文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
468
表題作を含めて8つの「〇〇〇マチ」の物語を収録。ここでのマチは「街」と「待ち」の掛言葉であろう。中央線沿線の街のどこかで、何かを待ち続ける女性たちが主人公である。ほんとうのところは、彼女たち自身も何を待っているのかよくわからない。かといって、それはシュールな物語などではなくて、いたって哀切でリアルな物語なのである。思えば「待つ女」の系譜は日本文学の古典的伝統である。謡曲「砧」をはじめ、それを踏まえて書かれた『雨月物語』中の「浅茅が宿」など枚挙に暇がない。8篇はいずれも「あはれ」の横溢する物語であった。2019/01/17
ミカママ
116
ずっとこのタイトルは「ドラマ街」なんだと思ってました。「ドラマ待ち」だったのね。どこにでもいそうな主人公たちのどこにでもありそうな日常、でも実は心の中がぐちゃんぐちゃんで、というような角田さんらしい内容。おまけにおいしそうなお料理やお酒ががここかしこに登場して。「わかるよ!わかる!!」と思わず主人公に感情移入してしまうような、そんな小説でした。2013/11/18
あも
104
吉祥寺、荻窪、武蔵、三鷹…耳馴染みのある中央線沿線の『マチ』を舞台に、子供、本当の私、プロポーズ…色んなものを『待つ』30代の女性達を描いた短編集。どの女性も閉塞感や倦怠感に包まれた薄曇りの中にいる。未来に輝かしい物だけが待っていた10代、20代を経て、待っている物が素晴らしいとばかりは言えなくなる世代。どこにでも行けた筈がいつしかどこにも行けなくなっている。それでも人生はまだまだ続く。100%の喜びとは限らなくても喫茶店の年季の入ったソファに座り、待ってみよう。何かが変わるきっかけはきっとそこかしこに。2019/08/27
巨峰
103
40歳前の女性が主人公の短編8編。東京中央線の沿線に住む彼女たちは、20代のころのようなドラマチックな生活はもう送ってはいなくて、昨日がそのまま続くような今日そして明日という日々に味気無さを感じている。作者の描写は、クールだけど、近く、特に後半は盛り上がり、そのうち「ドラママチ」「ワカレマチ」の二編は性別・年代も違う私にもガツンとくるような傑作だったと思います。舞台となった町に地理感はないけど、素敵な喫茶店が多いなぁと2024/12/10
ひろちゃん
103
短編集。角田さんの小説読んでると恋愛の難しさを改めて感じるわ。たいていの女の子は個々の男の子がしてほしいこととか、して欲しくないこととか熟知してるんだろうか?2015/12/26