内容説明
千坂通りの写真館主夕城香留に持ち込まれた縁談は、勿体ないような話だった。相手は新橋の老舗の呉服商の妹、華丘弥宵38歳、初婚。香留は承知したのだが、それはスナップ風の見合写真に男の影を確信したからであった。台風が本州に接近して蒸し暑い朝、山梨県南石和の穴沢町の市道沿いの崖下で全裸の腐乱死体が発見された。身元が割れる手掛りになるようなものは何もなかった。弥宵は初めてであった。しかし、弥宵の影はますます強く感じられた。やがて夕ぐれのように影は大きく成長しすべてを事件の中につつみ込んだ。
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- 和書
- 玉座と小夜啼鳥 4