出版社内容情報
幼い息子を喪った父。〈その日〉をまえにした母に寄り添う少女。日本の美しい風景のなか、生と死がこだまする、ふたりの巡礼の旅。
内容説明
幼い息子を喪った「私」は旅に出た。前妻のもとに残してきた娘とともに。かつて「私」が愛した妻もまた、命の尽きる日を迎えようとしていたのだ。恐山、奥尻、オホーツク、ハワイ、与那国島、島原…“この世の彼岸”の圧倒的な風景に向き合い、包まれて、父と娘の巡礼の旅はつづく。鎮魂と再生への祈りを込めた長編小説。
著者等紹介
重松清[シゲマツキヨシ]
昭和38(1963)年、岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務を経て、フリーライターに。91年『ビフォア・ラン』で作家デビュー。99年『ナイフ』で第14回坪田譲治文学賞、『エイジ』で第12回山本周五郎賞を受賞。2001年『ビタミンF』で第124回直木賞受賞。10年には『十字架』で第44回吉川英治文学賞を受賞。ルポルタージュ、時評、評論など小説以外のジャンルでの執筆活動も高い評価を受けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
相田うえお
146
★★★☆☆18010 やっとハイハイ卒業かというときに小さな命を落としてしまった我が子。心の傷が癒えない父親(再婚の主人公)は旅に。。或る経緯から別れた妻との娘が一緒に。。書き出しから心を掴まれてしまいます。感情を揺さぶられ涙腺がふんわり刺激される作品です。では昔話を。旅で恐山に行ったときの事(硫黄臭いんだ〜)イタコに親を呼んでもらっている方がおりまして...当方はたまたま近くにいたんです。その方の呟きが聞こえてしまいまして「あれ、うちの親は生まれも育ちも東京だけど津軽訛りになったんだね。」と。2018/01/31
ミカママ
111
重い。1歳ちょっとで子どもを亡くした夫婦と、それをめぐる人々の喪失を描いた物語。作中、あまりに人が亡くなる(過去に亡くなった)ので、気がふせいでいるときに読む作品ではないですね。タイトルからして、泣ける作品かと思ったのだけど、そうでもない。ひたすら気を重くさせる小説でした。救いは、これは紀行小説でもある、という点。主人公といっしょにあちこち旅をした気分になれます。ラストには一筋の光も見えましたが、主人公と洋子さんは、離婚せずにこの後向き合っていけるのかな、気になるところです。2014/12/15
まさきち
98
関根の煮え切らない感じにイライラしながらも、明日香のさらっとした雰囲気に助けられて読み進めました。そして実の母・美恵子の死を前にして当初はそっけなかった明日香が抱えていた寂しさが昇華され,、大きく成長していく姿に温かい気持ちをもらいました。最後の精霊流しの場面も素敵でした。2017/05/26
優希
74
悲しくて辛い作品です。重いと言ってもいいかもしれません。テーマが「死」だからでしょう。幼くして子供を亡くした夫婦と、夫婦をめぐる人々の喪失の物語です。息子を亡くした「私」は前妻の娘と共に旅に出ます。それと同時にかつて愛した妻もまた命が消えようとしていたのです。あまりに死が色濃いので気持ちがふさいでしまいますね。ただ、この作品が紀行文であるというのが救いだと思います。最後には光も見えますしね。「この世の彼岸」の風景に向き合いながら続く娘との巡礼の旅は再生への祈りを込めた鎮魂歌だと言えるでしょう。2015/01/05
TAKA
73
人間同士だからうまくいかないことだってある。一緒に暮らせないことと憎むことは違う。人は迷いながら生きているし、右の道を進んでも左の道を進んでも。悔いが残らないのならどっちだっていい。それぐらいの気構えで生きていかないと寿命までやっていけない。人生は平坦ではないからね。せめて一度ぐらいお父さんと言ってあげてほしかったなあ。きみ去りしのち どう生きていくか葛藤と模索の旅。重いけど第九章でなにか晴れ間が見えてよかったような。 まほろばという言葉が強く残っている。2020/07/01
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