内容説明
偶然再会した少年の頃のヒーローは、その後、負けつづけの人生を歩んでいた。もう一度、口笛の吹き方を教えてくれたあの頃のように胸を張って笑って欲しい―。家庭に職場に重荷を抱え、もう若くない日々を必死に生きる人々を描く五篇を収録。さり気ない日常の中に人生の苦さをにじませる著者会心の作品集。
著者等紹介
重松清[シゲマツキヨシ]
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒。出版社勤務を経て、91年『ビフォア・ラン』でデビュー。97年発表の『ナイフ』は現代の家族が抱える問題を鮮やかに描き出し、坪田譲治文学賞を受賞する。その後も現代社会をテーマに次々と意欲作を発表、99年『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
5 よういち
102
5編の短編集。かつて描いた夢は遠ざかり、それなりに人生を経て、決して勝ち組とはいえない面々が描かれる。どの話しも解決の兆しはなく、ハッピーエンドではないが、読み手のハートを少しだけくすぐる感がある。それは主人公たちへの少しばかりの優越感と共感からくるのだろうか。◆少年野球で将来のスターを期待された中年男を描く「口笛吹いて」。挫折した熱血教師の「タンタン」。リストラされた父親を子どもの視点で追う「かたつむり疾走」。亡くした息子を背負って生きる、せんせえの「春になれば」。自立する妻と古風な夫の「グッドラック」2019/06/26
カーミン
47
「もう若くない日々を必死に生きる人々を描く五篇」裏表紙にはそう書いてある。働き盛りのお父さん、お母さんたちが、一生懸命頑張っている姿が書かれている。私は、ラストの「グッド・ラック」が、心に残った。小さな子どもを育てながら働く夫婦。妻は仕事に自信と喜びを持っているが、夫は妻には家で育児に専念してほしい。働く女性を追い詰める永遠のテーマ。私も彼らの年頃には同じようなことで悩んだなぁ、と振り返る。2019/03/14
NAO
38
春になればの"うらやましいです”って言葉が印象的でした。子供が色々やってくれるけど、そーなんですよね…自分がいかに幸せか痛感しました。後の作品も良作でした。2015/06/10
KAN
34
一気読みでした。私はこのパターン好きですね。家族の短編で、かなり現実的です。勝ち負けなんてあるんですかね。そのことが良く理解できます。2014/09/10
一笑
27
勝ち組負け組、勝者敗者。人生にはいろいろあるんだろうけれど、勝ち組は勝ち組なりに負け組は負け組なりに、それぞれ小さいながらも勝ち負けがあるんだと思う。その積み重ねが年をとると言うことかな? いやそうだと思いたい。重松さんの本はどの本も、私の心をくすぐる。嘉門達夫さんの解説もいい。ところで、はてさて私の人生は勝ち組負け組? どっちかしらん?2022/08/14