出版社内容情報
「過去」を探す旅に出た、魔女の血をひく由美子。たどり着いた驚愕の結末とは。暗い時代への祈りが込められた唯一無二の小説世界。
内容説明
由美子は久しぶりに会ったいとこの昇一と旅に出る。魔女だった母からかけられた呪いを解くために。両親の過去にまつわる忌まわしい記憶と、自分の存在を揺るがす真実と向き合うために。著者が自らの死生観を注ぎ込み、たとえ救いがなくてもきれいな感情を失わずに生きる一人の女の子を描く。暗い世界に小さな光をともす物語。
著者等紹介
よしもとばなな[ヨシモトバナナ]
1964年、東京生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。87年、「キッチン」で海燕新人文学賞、88年、単行本『キッチン』で泉鏡花文学賞、89年、『TUGUMI』で山本周五郎賞を受賞。アメリカ、ヨーロッパなど海外での評価も高い(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
びす男
83
「時間の感覚が夢の中みたいになっていたら、きっといつでも優しくいられるんじゃないだろうか。ほんとうは人は人にいつだってそうしたいんじゃあないだろうか」。設定はファンタジーだけれど、読む人の心をほんのり照らす力のある小説。普通、自分のような読者は、リアリティーや事実性などに力を感じるはずなんだけれど。この筋に読者をついてこさせるには、やっぱり卓越した筆力がないと無理だったろう。こういう小説に出会えるたびに、物を語るっていいね、素敵なことだね、と思う。よしもとばななを読むのは初めて。面白かった。2017/04/29
優希
57
優しくてあたたかくてホッとする感じがあります。魔女の呪いから逃れるために旅に出る由美子と昇一。両親の忌まわしい記憶と自分を揺るがす真実と向きあうのがひりひりしました。死生観と希望がなくても美しい心を失わずに生きるひとりの女の子の姿がじんわりきました。世界は暗いけれど光が差してくるようなあたたかみがありますね。由美子が子供っぽくなっていくのが少し不思議な世界観の味を出していると思います。日々の幸せをそっと切り取っているようなところが随所に見られ、心がほっこりさせられました。2014/09/14
ゆめ
56
とても残酷で辛いお話と思いながら読んでいたら 全く想像しない展開に。でも残酷さは変わらず 私はあまり読了後 爽やかな幸せな気持ちにはなれなかった。2018/10/21
yanae
36
ばななさん長編。個人的にばななさんの本って最後が気になる!っていうよりかは一文一文を楽しむのがほとんどなんですが、今作は「ん?これはこうなのか?」など推測させるつくりになっていて、最後が気になる!という楽しい読み方も出来ました。もちろん従来どおり一文ずつ大事によめる要素もあり。 お話自体は軽い話ではなく、主人公の悲惨な過去、トラウマを幼馴染が一緒にたどっていくというもの。でもばななさんのあとがきにもあったけど、重い話なのに癒しがあって読むのは苦痛ではなかったです。最後は本当にビックリ!2013/09/25
はな
31
とても暗い話のはずなのに、何度読んでも安心で泣いてしまう。現代では理想と言われてしまいそうな、そんな愛情を求めてもいいんだと肯定してくれる小説だと思う。例えば、一緒に過ごす間はスマホなんて見ずに私と真剣に向き合って欲しい、とかね。2015/11/11