内容説明
公園にひとりで座っていると、あなたには何が見えますか?スターバックスのコーヒーを片手に、春風に乱れる髪を押さえていたのは、地下鉄でぼくが話しかけてしまった女だった。なんとなく見えていた景色がせつないほどリアルに動きはじめる。日比谷公園を舞台に、男と女の微妙な距離感を描き、芥川賞を受賞した傑作小説。
著者等紹介
吉田修一[ヨシダシュウイチ]
1968年生まれ。高校まで長崎で過ごし上京。法政大学経営学部卒業。97年、「最後の息子」で第84回文学界新人賞を受賞。同作が芥川賞候補作となる。その後も「破片」「グリンピース」「Water」「突風」等の作品を次々と発表。2002年、『パレード』で山本周五郎賞、「パーク・ライフ」で第127回芥川賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
501
2002年上半期芥川賞受賞作。芥川賞の候補となり受賞するのは、通常は文学として新しい手法なりを持っているか、あるいはそれまでの作家の誰もが持っていなかったような個性がそこに感じられるかのいずれかだと思われる。ところが、この小説、および作家には一見したところそうした点は見当たらない。小説としては巧みだと思うのだが(概ね審査員も完成度の高さを評価している)、強いインパクトがないのだ。そして、おそらくはそれこそがこの作家の特徴なのだろう。都市の文学としてのリアリティは十分に確保されているのだから。2013/06/26
遥かなる想い
444
第127回(平成14年度上半期) 芥川賞受賞 。 日比谷公園を舞台に 「今」を描く。 ひどく都会的な雰囲気を味わえる ような気がするのは、「日比谷」 はやはり東京のど真ん中に あるためなのだろうか。 公園のベンチに腰掛けながら、 見渡す風景は、ひどく新鮮で 面白い。 「スタバ女」との会話が 物語にリズムを与え、でも 何も始まっていない都会の日常を リアルに描く…そんな作品だった。 2014/03/23
ehirano1
273
全てが「点」であって「線」にならない・・・それこそが「パーク・ライフ」なのか?2023/03/18
しんごろ
254
日常でありそうな話でここで終わりという感じの話2編!『パーク・ライフ』…ちょっとしたきっかけで出会い、徐々に日比谷公園で会う回数を増やしていく。果たしてつきあうのか、それとも…。一方で宇田川夫妻は別れちゃうのか。ここで終わりかい!読み手の想像に委ねられましたね。自分ならハッピーエンドで終わってほしい。『flowers』はザワザワする感じで、まあ、元旦は置いといて、夫婦が熱々から冷えきった感じがなんとも言えないですね。これも結末を委ねられた感じで、ふとしたきっかけで夫婦仲が戻ると信じたいですね。2019/05/30
hit4papa
216
本作品に描かれている日常は、まったく何もおこりません。心の闇とか、懊悩とかに慣れきってしまうと、何もないことがやけに新鮮に思えてしまいます。純文学が表しようのないものを文章にする文学ならば、何もないことをしたためている本作品も純文学なのでしょう。何もないのにつまらなくないのが素晴らしい。フツーであることがとても心地良い。『パークライフ』はそんな作品です。