内容説明
天下にむかってはなばなしく起ち上った織田信長の家中に、ぼろぼろ伊右衛門とよばれる、うだつの上らない武士がいた。その彼に、賢くて美しい嫁がくるという…伊右衛門は妻千代の励ましを受けて、功名をめざして駈けてゆく。戦国時代、夫婦が手をとりあってついには土佐一国の大名の地位をえた山内一豊の痛快物語。全四冊。
著者等紹介
司馬遼太郎[シバリョウタロウ]
大正12(1923)年、大阪市に生れる。大阪外国語学校蒙古語科卒業。昭和35年、「梟の城」で第42回直木賞受賞。41年、「竜馬がゆく」「国盗り物語」で菊池寛賞受賞。47年、「世に棲む日日」を中心にした作家活動で吉川英治文学賞受賞。51年、日本芸術院恩賜賞受賞。56年、日本芸術院会員。57年、「ひとびとの跫音」で読売文学賞受賞。58年、「歴史小説の革新」についての功績で朝日賞受賞。59年、「街道をゆく“南蛮のみち1”」で日本文学大賞受賞。62年、「ロシアについて」で読売文学賞受賞。63年、「韃靼疾風録」で大仏次郎賞受賞。平成3年、文化功労者。平成5年、文化勲章受章。平成8(1996)年没
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
274
みすぼらしいボロボロのひどい姿で信長の軍勢の末端をゆく山内伊右衛門。後の土佐大大名までのしあがる山内一豊の成り上がり記、第一巻。司馬御大さすがにそそられます。伊右衛門は何の取り柄もないパンピー!あえて言うなら『素直』で『一所懸命』だけ。ただ伊右衛門は至上の宝を得る❗新妻の千代だ‼️巧みに男の自尊心を刺激し、時に神仏の言葉を説く!素直に信ずる伊右衛門は戦場で千代の姿と果敢に戦う。自然、姉川、長篠の厳しき戦を乗り越え知行はうなぎ上り!『功名』を占う『辻(分かれ目)』を描く司馬ワールド、以降が楽しみです‼️🙇2019/01/21
遥かなる想い
148
第45回(2006年) NHK大河ドラマ原作。山内一豊の妻として知られている千代の話は、ある意味不思議である。夫を支える妻の理想像として、創りあげられた気もするが、長曽我部が牛耳る土佐の国を治めた一豊もまた立派である。司馬遼太郎の本は歴史上の人物に焦点をあて、見事に現代に生き返らせてくれるが、本書もまた同じである。2010/07/31
つーこ
124
序盤からいきなり面白い。グングン物語に引き込まれる。山内一豊という一見地味な戦国武将の話がこんなに面白いとは。この時代には珍しく(?)凡庸で強くなく自我も弱い。そんな彼は妻、千代の支えによって実に上手にこの荒れた戦国時代を渡り歩いて行く。それにしても、千代の考えや行動には学ばされる事ばかり。超ポジティブシンキングで、夫を立て、良いタイミングでお金も使う。まだ影の薄い一豊、彼が輝く日が来るのか?2019/09/29
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
117
関ヶ原の合戦の後、長曾我部氏に変わって土佐二十四万石、一国一城の主となった山内一豊の物語。戦国の世、男が男であることを表現するには功名しかない。その功名をあげさせるのは本人の才覚であり、 女房の後押しである。司馬氏自らが作中で「このような男が後に一国一城の主になるとはとても思えない」と述べるように、凡庸な人生を送ったかもしれない。ひとえに奥方である千代の操縦術。旦那を立身出世させたければこうしなさいという見本のようだ。ほんと男は単純だからね。史実に忠実というよりは、エンタメ度が高そうな予感。2017/11/29
TATA
94
土佐の藩主となる山内一豊の生涯。高知での評判は芳しくなかったと聞いたことがあるけどどうだったっけ。気品があるけど堅物で貧乏でボンヤリとした主人とは結構な書かれかた(笑)。とにかく奥方に恵まれ、コロコロとその掌中で転がされる様はほんにかわいらしく。奥方の聡明さを見破れない一豊故にこの素晴らしいコンビネーションが維持できるのだなと。長篠合戦を終え織田の絶頂期、さあ二巻へ。2018/12/15