内容説明
明治十年二月十七日、薩軍は鹿児島を出発、熊本城めざして進軍する。西郷隆盛にとって妻子との永別の日であった。迎える熊本鎮台司令長官谷干城は篭城を決意、援軍到着を待った。戦闘は開始された。「熊本城など青竹一本でたたき割る」勢いの薩軍に、綿密な作戦など存在しなかった。圧倒的な士気で城を攻めたてた。
著者等紹介
司馬遼太郎[シバリョウタロウ]
大正12(1923)年、大阪市に生れる。大阪外国語学校蒙古語科卒業。昭和35年、「梟の城」で第42回直木賞受賞。41年、「竜馬がゆく」「国盗り物語」で菊池寛賞受賞。47年、「世に棲む日日」を中心にした作家活動で吉川英治文学賞受賞。51年、日本芸術院恩賜賞受賞。56年、日本芸術院会員。57年、「ひとびとの跫音」で読売文学賞受賞。58年、「歴史小説の革新」についての功績で朝日賞受賞。59年、「街道をゆく“南蛮のみち1”」で日本文学大賞受賞。62年、「ロシアについて」で読売文学賞受賞。63年、「韃靼疾風録」で大仏次郎賞受賞。平成3年、文化功労者。平成5年、文化勲章受章。平成8(1996)年没
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感想・レビュー
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優希
94
西南戦争開始です。士族側は作戦などないまま戦いにのぞんだようです。力任せに攻めていけばどうにかなるかもしれないと思ったのかもしれません。そのせいか、優勢な様子は感じませんでした。沈黙している西郷どんですが、今後はいかに動くのでしょう。2019/01/25
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
93
これまでが長かった。明治10年2月。これまで沈黙を守っていた薩摩の士族もついに暴発。西南の役が始まる。ここにきても西郷は自らは全く動かない。自分の運命を完全に他人にゆだねているように思える。幕末あれほど活躍していたのが嘘のようだ。すでに厭世的な気持ちになっていたのか?それにしてもこれを迎え撃つ政府軍もまたどたばた。連隊長たる乃木の戦ベタはこの時も、この後日露戦争になってもなおらないんだよね。なぜあそこまで出世ができたのか本当に不思議。2013/06/08
やっちゃん
84
漫画小説によくある天才軍師の相手の裏の裏をかく美しい戦略とは程遠い、猪突猛進で脳筋な展開が悲しい。せごどんここまで一度もいいとこなし。真面目にやってくれと言いたくなる。さらに坂の上の雲に続いてここでも乃木大将が無能を晒されてて泣けた。2024/02/26
Book & Travel
65
ついに薩軍進発。しかし西郷は諦感したようにただ担ぎ上げられるままで、桐野ら将官には戦略も戦術もない。谷干城守る熊本城を落とせる訳も無く、政府援軍との野戦へ。克明で淡々とした流石の戦闘描写は臨場感があって、巻末の地図と首っ引きでどんどん読み進める。若き乃木希典も登場。司馬さんはやはりこの人には厳しいようだ。粗暴な作戦でことごとく勝機を逸する薩軍がもどかしく情けないが、士族や民衆からの支持は絶大。対する太政官政府の不人気は、近代化が急速に進む中でやむを得ず生じたひずみだったのか、進め方のまずさからだったのか。2017/12/18
財布にジャック
58
乃木さんが登場した時点で、「坂の上の雲」を思い出しました。それにしても司馬さんの乃木さん像があまりに残念すぎるのが気になります。薩摩軍も政府軍も、行き当たりばったりなのも読んでいて辛くなる原因かもしれません。残りあと2冊なので大切に読みます。2014/01/29