内容説明
「小春日和のような穏やかな暮らしを一変させた妻の入院、そしてあまりに唐突な末期ガン宣告。それは私にとって、すさまじい木枯らしの日々の始まりでした」。長年連れ添った妻の急逝により茫然自失、自殺を試みついに精神科に入院、ようやく回復するまでの嵐の日々を、元NHKお天気ニュースキャスターが率直に綴る。
目次
プロローグ 人生の小春日和
木枯らし(初めての木枯らし;二〇パーセントの日々 ほか)
妻と迎えたいくつもの季節(あの頃のふたり;子供のいない夫婦 ほか)
時雨(不安と絶望;後悔と罪の意識 ほか)
エピローグ そしてまた、小春日和(降りやまない雨はない;人生は展開するもの)
著者等紹介
倉嶋厚[クラシマアツシ]
1924年、長野市生れ。49年、気象庁に入り、札幌気象台予報課長、鹿児島気象台長などを歴任。84年、気象庁定年退職後、NHK解説委員として「ニュースセンター9時」「NHKモーニングワイド」などで気象キャスターを務める。フリーとなった92年から96年まで「NHKおはよう日本」で「倉嶋厚の季節の旅人」を担当し、現在フリーの気象キャスター、エッセイストとして活躍中。第一回国際気象フェスティバル(フランス)・ベストデザイン賞、日本放送協会・放送文化賞などを受賞。理学博士
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
130
倉嶋厚さんは最愛の奥様を喪い、自分を責め続け強度のうつ病となる。自裁のぎりぎりの線までうつ病は進行。家事をお願いしていた水口さんの助けもあり入院し、徐々に回復に至った。私は離婚しているので、まず倉嶋さん夫婦の素晴らしい夫婦関係に感動した。相手に起こった良い出来事を自分のように喜ぶ姿に素朴に感動した。得難い間柄だと思う。それだけに、倉嶋厚さんを襲った衝撃は計り知れない。この作品では倉嶋厚さんは、うつ病は必ず治る病気と書いている。確かに波はある。それでも明日に絶望せず、今日を懸命に生きれば、それで良いと思う。2017/03/19
佐島楓
38
奥様と死別され、うつ病を患ってしまわれた著者。立ち直るまでの日々がいかに苦しいものであったか、共感できた(簡単に共感できた、などと申し上げてはいけないが・・・)。心の支えを失ってしまわれた方のきつさであったり、自分ではどうしようもなかったことで苦しんだり、後悔したり。ただ、こう文章に著されることで救われ、またどなたかを救うことも、確実にあるのだろう。どんな状況にあっても、優しさだけはなくさずにいたい。2014/12/28
haruka
28
著者は73歳のときに妻を喪い、死を考えるほどの重度の鬱になった。2人で生き、楽しかった日々、子どもを持てなかった経緯、悲しみ、闘病と別れ。仕事への思いの本はあふれていても、結婚生活に対する男性側の気持ちってあまり語られることがないから、とても参考になった。女性と比べて男性はいつまでも「やさしい母」を求めているんだなぁ。失うことで、またあらためて好きになってるみたい。私がもし先に死んでここまで悲しんでもらえたら、しっかりしてよと思いつつ少し嬉しいかもしれない。2024/12/06
hiro-yo
24
倉嶋さんは、かつて昔にNHKお天気キャスターとしてご活躍されていたことを記憶しています。 先日拝読した城山三郎さんの『そうか、もう君はいないのか』と同じく、ご本人の結婚から妻との別れ、そして晩年の姿が綴られています。ただ、妻との別れは、倉島さんは城山さん以上に辛い。 私が同じ立場になったら、私も倉嶋さんのように心にも深い傷を負いそうだ。 気象学者らしく、気持ちを天候に置き換えて表現されているところが特に印象に残った。 2019/05/22
まさげ
15
テレビのお天気コーナーでの丁寧なお天気解説、穏やかな季節のエッセイ。私生活ではこんな苦労されていたとは…。 つらい出来事が書かれていましたが、最後はいつもの倉嶋さんの穏やかな季節の便りでした。2019/02/15