内容説明
金融恐慌と山東出兵で始まった昭和。マルクス主義が猖獗を極め、自らも心酔した時期。太平洋戦争と応召。戦後、東大紛争当時は全共闘によって173時間、キャンパス内に軟禁されたが、最後まで要求に屈せず、筋を通した。そしてベルリンの壁崩壊と天皇崩御。西洋史家の目を通して活き活きと描かれた同時代史。
目次
昭和の幕開け
南京事件と山東出兵
満州某重大事件と天皇の悲劇
「旧制高校」というもの
マルクス主義に心酔した頃
西洋史との出会いと滝川事件
二・二六事件と昭和天皇の決断
スペイン内乱とシナ事変
東大経済学部の内紛
太平洋戦争と私の召集〔ほか〕
著者等紹介
林健太郎[ハヤシケンタロウ]
大正2(1913)年1月2日生まれ。歴史学者。東大名誉教授。東京府立第六中学校(現在の都立新宿高校)、第一高等学校を経て、昭和10年東京帝国大学を卒業。その後、一高教授となり、22年東大助教授、29年教授となる。43年東大紛争当時は、文学部長として活躍。48年に東大総長となる。その後、日本育英会会長、国際交流基金理事長、自民党参議院議員等を歴任
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感想・レビュー
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アメヲトコ
5
ドイツ史研究者で元東大総長であった林健太郎氏が、自らの人生を昭和史の動きと重ねながら語った一冊。自叙伝というのは読解に留意が要りますが、戦前の一高・東京帝大の雰囲気や、本書のハイライトでもある全共闘からの軟禁顚末などは極めて面白く読みました。著者の歴史観はマルクス主義的な唯物史観とは異なり、人間の意志の力を重視するもので、それは全共闘との対峙にみられるような著者自身の強靱な精神への信頼と無縁ではないような気がしました。2017/04/09
あ
0
うー、昭和史はともかく私の部分があまりないです2017/09/14
sodium hydride
0
淡々とした文体だが、なかなか面白い。◆戦時中兵役についたときも優遇され、東大総長を辞めた後の参議院議員時代も「大体において暇だった」となんの衒いもなく書いているところが(皮肉ではなく)著者の人間性を表していると思った。◆マルクス主義を信望していた時代の自分の内面もオブラートに包むことなく淡々と正直に書かれています。◆東大紛争の文学部長として軟禁されたところの描写は、他のところと違って、少し「熱い」ものを感じた。2012/11/06