内容説明
定時制高校の教壇に立って二十数年、子供たちの変化に脇浜義明は戸惑っていた。「成績は悪いが、ケンカは強い」が、いつ「成績も悪く、ケンカも弱い」になってしまったのか。脇浜は子供たちにひとつでも「勝つ」ことを知ってもらおうとボクシング部を創設する。それは彼自身の敗者復活戦でもあった。大宅壮一ノンフィクション賞受賞。
目次
第1章 夜学
第2章 道場
第3章 攻防
第4章 硬派
第5章 敗北
第6章 亀裂
第7章 夏
番外篇 フェルナンデスの男―一九九五年
著者等紹介
後藤正治[ゴトウマサハル]
1946年京都市生まれ。72年京都大学卒業。ノンフィクション作家。85年『空白の軌跡』(講談社文庫)で第4回潮賞ノンフィクション部門、90年『遠いリング』(同)で第12回講談社ノンフィクション賞を受賞。95年本作で第26回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
183
第26回(1995年)大宅壮一ノンフィクション賞。 西宮西高校の定時制のボクシング部の活動を描いた作品である。脇浜という定時制高校教師が 出会った人生は、なぜか懐かしく 昭和の日々を思い出させる。 ボクシングを介しての生徒たちとの短く そして 暑い夏の季節…心暖かく 余韻に残る、そんな作品だった。2017/10/07
姉勤
30
バブル期。同世代の若者がお立ち台で扇子を振って浮かれる中、定時制高校に通いアマチュアボクシングに精を出す事情も都合も異なる子供達。その若者たちを指導した熱血顧問の約10年のルポルタージュ。授業より部活、組織より個人、管理より放任。生徒たちに時にウザがれ、疎まれ、しかし信任され、感謝される。濃密な人間関係を求めつつ裏腹にシャイな、いかにも人間的な人物を活写する。当時の生徒たちと同時代、先生と同世代であれば、反感と共感。驚嘆が入り混じる。多様性と言いつつ単一性を押し付ける現代では紡げない物語、哀愁の彼方に。2026/09/09
Willie the Wildcat
22
人生の”敗者復活戦”。自分の人生でも思い当たる転機。見返す、達成、復活・・・。本著では、ボクシングを通した”自分自身”に対するリターンマッチ。真剣勝負。挫折。そして、成し遂げた時の充実感。無論、物理的(例:インターハイ優勝)ではなく、精神的な達成感。その後の人生の”張り”が違う気がする。努力は裏切らない。そして誰かが寄り添ってくれることが鍵。単なる教育論ではなく、人財育成、精神衛生の観点でビジネスにも繋がる。改めて、世の中に根っから悪い人間なんていないよね!って感じさせてくれる。2013/01/05
半木 糺
6
「過剰さ」。それが本書を読んだ感想である。あるいは「濃密さ」と言い換えてもいい。脇浜義明氏は懸命に生徒たちに語りかける。それを一言で表すと「負け犬になるな」ということであろう。脇浜氏はそれを言葉でなく、行動で伝えようとする。しかし「熱量」というものは受け取る側もそれに立ち向かう覚悟を持たねばならない。脇坂氏の放つ過剰なほどの「熱量」は人を選ぶこともまた事実である。しかし、その熱さは本書を通じて、少量ではあるが確かに私にも伝わってきた。2014/02/11
あかつや
5
定時制高校のボクシング部を追ったノンフィクション。世間一般の当たり前とされるルートから外れて定時制に通う子どもたちが、どのようにボクシングと向き合っていくかを丹念に描いている。彼らの中には腕っ節の強さを発揮して華々しい成果を上げる者がいる一方で、才能は認められてもなんとなく続けられなくなってドロップアウトしてしまう者もいる。そんな彼らに一喜一憂させられる顧問の脇浜先生は武骨だが実に魅力的な人物だ。この人は教育論をぶったりしないのがいい。ただこういう個性的な教師は今の時代では存在を許されないんだろうなあ。2019/05/31




