出版社内容情報
およそ海外旅行と無縁の私小説作家が初めて世界クルーズへ。同行者を呪い、半生を振り返りつつ、それでも世界はそこに毅然と実在した。
内容説明
なんの因果か、還暦過ぎて嫁はんにせがまれ、世界一周のクルーズに出ることになった「私」。シンガポール、ケープタウン、リオ・デ・ジャネイロ、イースター島、タヒチ…。名勝をめぐる旅は「私」にとっては人生最大の苦行であった。同行者を呪い、半生を振り返りつつ、それでも世界は、猥雑かつ壮大に、「私」のまえに存在した。
著者等紹介
車谷長吉[クルマタニチョウキツ]
昭和20年、兵庫県飾磨市(現・姫路市)生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。広告代理店、料理屋などで働きながら小説家を目指す。平成5年『鹽壼の匙』で三島由紀夫賞と芸術選奨文部大臣新人賞、平成9年『漂流物』で平林たい子文学賞、平成10年『赤目四十八瀧心中未遂』で直木賞を受賞。平成13年には「武蔵丸」で川端康成文学賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mr.lupin
61
紀行文かなと想像していたけど、う~んチョッと違っていたかな。まさに車谷さんの航海日記って感じの1冊。この作家さん、直木賞作家なんですね。 ★☆☆☆☆2017/11/03
メタボン
30
☆☆☆☆ ピースボートの航海中に来し方を振り返る自伝のような日記。作家、車谷長吉の成り立ちを見るようで、興味深かった。「恐怖」の要素はほとんどない。詩人、新藤涼子の大物ぶりが面白い。2017/11/25
Tadashi_N
29
日本人の多いクルーズ客船は、縮小版の日本社会。悪い事が目立つ。2021/07/14
あんPAPA
6
定年退職後は妻と豪華客船での世界一周旅行も有りか?と考えていたが、この本を読んで一寸とストップが掛かった。著者が厭世的でもあり、還暦を超えて「嫁はん」に請われての旅行という事でネガティブな表現が増えるのは想定内であった。それでも、結構揺れて船酔いするとか(終わりの見えないゆる~い拷問ではないのか?)、良く腹をコワすとか(私も「腸弱」である)、人間関係が煩わしいとか・・・(定年後でもそれかい!)。船での世界一周はもう少しリサーチが必要である。同行の親分肌のおばはんは「火宅の人」のモデルの一人でもあるそうな。2022/07/29
kousei
5
氏の著作は初読み。ピースボート航海体験記で紀行文かと思ったが日記という感じ、ところどころに著者の生き様が書かれ徐々に沁みてくる。職業作家にない凄み、かなりクセがあるけど明治の文士って印象、合間に豊富な読書歴が判る。常識人じゃあ並の作家にしかなれないね。文學界に連載していたそうです。2017/03/30