内容説明
オーストリア軍の兵士、オットーとカールの兄弟は、膠着状態の戦線で、ロシア兵達の虐殺を目撃したことをきっかけにジェルジュと呼ばれる若者に出会う…。第一次大戦の裏舞台で暗躍する、特殊な“感覚”を持つ工作員たちの闘いと青春を描いた連作短篇集。芸術選奨新人賞を受賞した『天使』の姉妹篇。
著者等紹介
佐藤亜紀[サトウアキ]
1962年新潟県栃尾市生まれ。成城大学大学院修士課程(西洋美術史専攻)修了。91年『バルタザールの遍歴』で第3回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。2003年『天使』で芸術選奨新人賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
339
長編小説『天使』と相補性を持つ形で構想された連作が4篇。そのそれぞれの時間軸の配列がまた複雑である。すなわち、あえて時系列を避けるかのような順序になっている。連作全体としてはジェルジェの誕生から、青年期までを描くのだが。また、『天使』を先に読んでいなければ、「頭を開く」云々が何のことかが十分には読者に了解されないだろう。オーストリア各地の地名が喚起する空間と時間の不思議な感覚に翻弄されそうである。何とも奇妙な、それでいて細部に恐ろしいまでのリアリティを有する小説である。それこそ、佐藤亜紀の頭を⇒ 2023/05/16
びっぐすとん
20
図書館本。短編の上、時間が飛ぶのでちょっと戸惑うが前作より時代背景とか勢力図より人間にスポットが当たってるので、登場人物に感情移入しやすい。ディートリヒシュタインが往生際悪すぎだけど、メニッヒ兄弟やオレグなどと一緒にすっかり道化役だったな。忘れた頃にギゼラ再登場。顧問官の死去、もう少し感傷的になるかと思ったらそこはドライなのね。でもジェルジュが彼を慕っていたのは十分伝わる。本の読み始めは悲劇的な最後も予想していたので、ラストは胸を撫で下ろすと同時に少し気が抜けた。でもこれで良かったんだとスッキリ思える。2019/02/13
ヨクト
15
「天使」の姉妹本。こちらは短編形式とらなっていて、更なる「感覚」の世界を格好良くエレガントに知ることができる。彼らの駆け引きや探り合いがなんともシビれる。また「天使」から読み直し、世界に浸りたい。2016/07/02
あ げ こ
15
良すぎて腹立たしい。もう痺れる。まず再会を実感させる掛け合いの鋭利さに。次に件の心残りがあまりにも素敵過ぎて。目眩。『天使』の時の高揚。一瞬にして蘇り、この世界に再び戻って来た喜びが心を駆け巡る。あの絶妙な滑らかさを。あの絶妙な脂の乗り具合を。疾走のあの華麗さを。一瞬で思い出す。彼等を象る言葉は多くない。彼等が発する言葉もまた。しかし自分は彼等をよく知っていると感じる。こういう人間であると、よくわかっている。それ以上にもそれ以下にもなり得ないが、するべき仕事はキッチリと、見事にこなして見せる彼等の事を。2016/05/09
眠る山猫屋
13
『天使』姉妹編。個人的にはこちらの連作短篇集の方が印象深い。前作で少しづつ触れられた登場人物に再会できたりもするし。特に『猟犬』のヨヴァンと『花嫁』での父親グレゴールのエピソードは、人間臭くってイイ。それにしても。荒俣先生がボヤいたように、まるで海外文学(それも東欧辺りか)の上質な翻訳を読んでいるような読みごたえ。このちょっと遠くて届かないような音色とでも評すべき、美しい文字の流れ。いい本です。2011/12/04
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