内容説明
身を潜めていた修道院を抜け出し、長崎・五島列島に向かった朧とアスピラントの教子。島に残る隠れキリシタンの痕跡を巡る旅の中、朧は“殺人者の横貌”を垣間見せる。そして教子は自分が心身ともに朧に囚われてゆくことを確信した。『ゲルマニウムの夜』に始まる『王国記』シリーズ第三弾は、『汀にて』と『月の光』の二編を収録。
著者等紹介
花村萬月[ハナムラマンゲツ]
1955年東京生まれ。中学を卒業後、オードバイで日本全国を放浪、様々な職業に就く。1989年『ゴッド・ブレイス物語』で第2回小説すばる新人賞を受賞し、小説家デビュー。1998年『皆月』で第19回吉川英治文学新人賞、『ゲルマニウムの夜』(『王国記』シリーズ第一弾)で第119回芥川賞を受賞
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感想・レビュー
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東森久利斗
2
サイケデリックな独特の色彩、露骨な性表現やグロテスクな汚物表現、烈しい衝動、生々しいリアルな世界からは想像もできない爽快感、心地よいギャップ。純粋な視点から見た不純な世界。癖になる。2021/08/05
Thinline
2
人間の奥の奥に潜む本性か本能か?危険な部分を深く掘り下げ描いた作者は尋常ではないと思う。共感できると公言する人は殆どいないでしょう。ディープな作品。2016/05/17
yuuuming
2
ロウ視点の話をもっと読みたいのが正直なところ。2012/12/31
ひつじねこ
1
ますます惰性の感が強くなってきた気がする。読み手を引き込む力は健在だけれど、作品の向かう先を決めかねているのかと疑ってしまう。二人の、と言うより教子の逃避行からは、頑張って何とか王国からの脱出を読み取ることはできる。向かう先が長崎なのは、結局己のバックボーンからは逃れられないことの暗示か。意識するにせよしないにせよ、一度在ったことを無にはできず、忘れようとするほど呪いのように染み付いていく、と。それは赤羽の宇川への企みでも触れられていたような気もする。しかし消化不良の感は拭えない。2014/06/18
uni
1
教子に激しく共感。途中、子供の無について、朧が生存論の理屈を持ち出してきたところがなんだかとても稚拙に感じ、知に淫すとは言い得て妙だと思った。2013/03/15
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