内容説明
神田須田町の大店を焼け出され、浅草御厩河岸に越してきた十七のおちえ。失意の日々の折々に大川を眺めるのは、水の流れがやる瀬ない気持ちをなだめてくれる気がするから…。情緒豊かな水端を舞台に、たゆたう人々の心模様を描いた宇江佐流人情譚。大好評の前作『おちゃっぴい』の後日談も交えて、しっとりと読ませます。
著者等紹介
宇江佐真理[ウエザマリ]
昭和24(1949)年北海道函館市生まれ。函館大谷女子短期大学卒業。平成7(1995)年「幻の声」でオール讀物新人賞を受賞し作家デビュー。『幻の声 髪結い伊三次捕物余話』『桜花を見た』『紫紺のつばめ 髪結い伊三次捕物余話』『雷桜』『斬られ権佐』『神田堀八つ下がり』は直木賞候補となる。『深川恋物語』で吉川英治文学新人賞、『余寒の雪』で中山義秀文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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時代小説大好き本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
97
「おちゃっぴい」の続編として、6つの河岸をテーマに書かれた短編作品です。気持ちがほっこりする読了感が何ともいえません。宇江佐さんの江戸人情話は、いつ読んでも疲れた頭の中を癒してくれます。本作は、男と女の細やかな人情の機微にすぱっと切り込んだ作品で、しっとりとした味わいの読み心地です。大人の女の恋心が印象に残ります。〈あとがき〉で著者が、本作誕生の秘話を語っていて、今は亡き宇江佐さんの人となりを偲ばせる面白い内容です。 2017/06/09
ぶち
95
宇江佐さんの文章は、まわりくどくなく、サラッと流れていきます。でも、そこからは江戸の市井の人々の人情があふれてきます。そして、気持ちがホッとするような読後感です。前作『おちゃっぴい』の続編となっていますが、前作に続いて登場してくるのは2人だけです。その分、バラエティに富んだ短編集となっていて、満足度が高かったです。 一番のお気に入りの短編は『身は姫じゃ』。身分の違いなど気にすることもなく親身になって世話してしまう江戸庶民の心優しさに胸がジーンとしてきます。お別れの場面では、涙腺が崩壊しちゃいました。2024/02/03
遥かなる想い
87
江戸の河岸に住む人々を描いた 抒情的な時代劇の短編集である。 どの短編も 心温まる江戸っ子の交流が 心に染みる。下町の江戸の言い回しが 懐かしい。何気ない出来事の 喜怒哀楽が込められた昔馴染みの 時代劇の短編集だった。2023/06/03
ぶんこ
60
河岸をテーマにした短編6編。 伊勢蔵親分が出てきた「身は姫じゃ」では、(はやこ姫)が龍吉に気にかけてもらって、伊勢蔵親分の家に世話になる事ができた事、本当によかった。 もし、気にかけてもらってなかったらと思うと、幼い姫の行く末がどうなっていたことか。 宇江佐さん江戸人情物は、いつ読んでも素晴らしい。 あとがきを読むと、尚の事著者のお人柄が伝わってきて、胸にジ〜ンときます。 「浮かれ節」の三土路さんの子供達が(ギュッとして)と父親に言う場面では、ほのぼのとしているのに涙ぐんでしまいました。 いい親子だな。2015/11/21
shizuka
54
『おちゃっぴい』の後日談ってことで、北斎やお栄がまた出て来るかなって楽しみに読んだんだけど、出てこなかった。そこだけちょっと残念だった。宇江佐さんのお話はまわりくどくなく、さくっとしている。読後感はほっこり。こういう短編集はいつでも気兼ねなく読めるので好き。とあるお公家のお姫さんを保護し、お世話するはめになった『身は姫じゃ」が一番好みだったかな。今よりずっと「生きる場所」の違いがはっきりしていた江戸時代。本来町人が公家と交わることなんてないんだよね。でも人と人との情は一緒だ。別れのシーンにはもらい泣き。2016/10/16