内容説明
お文は身重を隠し、年末年始はかきいれ刻とお座敷を続けていた。所帯を持って裏店から一軒家へ移った伊三次だが、懐に余裕のないせいか、ふと侘しさを感じ、回向院の富突きに賭けてみる。お文の子は逆子とわかり心配事が増えた。伊三次を巡るわけありの人々の幸せを願わずにいられない、人気シリーズ第五弾。
著者等紹介
宇江佐真理[ウエザマリ]
昭和24(1949)年北海道函館市生まれ。函館大谷女子短期大学卒業。函館在住。平成7年「幻の声」でオール讀物新人賞を受賞、デビュー。『深川恋物語』で吉川英治文学新人賞、『余寒の雪』で中山義秀文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
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感想・レビュー
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ぶち
104
意気地の無い男どもと気風が良く腕の立つ女たちの対比が際立つ今作でした。そんな感想を抱いたのも、与力の娘で剣術道場で師範代を務める美雨の心意気に惚れてしまったからかもしれません。伊三次とお文の間にできた子も、逆子というアクシデントがありましたが無事に産まれてホッと一息です。それにしても、伊三次のデレデレぶりには呆れてしまいます。掏摸の直次郎のその後のお話しも良かったです。直次郎とお佐和の二人の深い愛に、ウルッときちゃいました。情けない男の登場が多い中、伊三次、不破、直次郎の3人は、強くて情も厚いイイ男です。2021/08/19
ふじさん
100
「蓮華往生」は、緑川に関わる彼の妻、喜久壽の葛藤が作家の女目線で巧みに描かれており読み応えがあった。「畏れ入谷の」は、恋女房が将軍に見染められ別れざるをえない男の悲劇を描いた作品。「黒く塗れ」は、女の弱みに付け込み、呪いによって人を罪に陥れる下手人を伊三次の活躍で解決する捕物余話。「慈雨」は、元巾着切りの直次郎とお佐和の恋の顛末、心安堵する結末。どの短編も読み応え十分だが、一番の読みどころは、お文が逆子の子どもを無事出産し、子育てに四苦八苦する姿だ。伊三次の父親ぶりも垣間見れる。二人の今後が楽しみだ。 2022/06/05
もんらっしぇ
99
勿体ないと言いながらとうとう第五弾。お文ときたら家のことは女中に全部「おまかせ」だったのに伊三次の顔を見ると「まま喰ったのかえ」と、伊三次が腹をすかせていないかまるで母親のような言葉をかけていました。目出度く伊三次と夫婦になってもやはり「まま喰ったか」を繰り返すお文。彼女の真の愛情が感じられる何気ない台詞。良いですね~♪本作、個人的には推理劇をあまり期待していないのですがその回答が作者のあとがきにありました。つまり「捕物帳」ではなく「捕物余話」。事件そのものではなくその周辺を描くと。至極納得いたしました。2020/11/28
じいじ
84
「髪結い伊三次」シリーズも五話目で佳境に入り一段と面白くなってきた。身重を隠してお文はお座敷に出る。生来のお節介焼きが、とんだ厄介を背負うことも…。そんなお文の一言が泣かせます。「男と女は難しいねぇ。男は器用に女と女の間を渡り歩くが、女はたった一人の男をじっと待っているしかないからさ…」。逆児で難産の末、待望の息子が誕生。上役の不破が付けた名前は伊与太です。赤ん坊一匹で家の中が引っ繰り返ったような騒ぎです。産後は亭主に意地を張らなくなったお文が、いとも可愛いです。じっくり味わいたい髪結いシリーズです。2016/03/31
ALATA
77
今作は緑川平八郎が妻と喜久壽の間で揺れ動く「蓮華往生」、笑助を謀り縄する「月はどでがんす」で大活躍。春が訪れた直次郎とキャラクターが立っておもしろい。「さあて、他人のことより手前ェのことが先だ。お文、急ぐぜ」「あい」伊三次の廻りも俄かに忙しく動きはじめ、伊与太の成長が楽しみ。★4※表題がローリングストーンズのあの曲に、、リンクしてるのかなぁ。2021/05/26