内容説明
名門Q女子高に渦巻く女子高生たちの悪意と欺瞞。「ここは嫌らしいほどの階級社会なのよ」。悪魔的な美貌を持つニンフォマニアのユリコ、競争心をむき出しにし、孤立する途中入学組の和恵。ユリコの姉である“わたし”は二人を激しく憎み、陥れようとする。圧倒的な筆致で現代女性の生を描ききった、桐野文学の金字塔。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
561
この時点においては、桐野夏生がそれまでで最も力を注いで書いたのが本書だったのではないか。まず、客観体を取らずに一人称の手記としたことに作家の並々ならぬ意欲の表れが感じられる。ここから連想されるのは太宰の『女生徒』だ。ただし、逆説的なのだが、そこでは戦時に移行してゆく時勢が彼女を救ってもいた。そうした救いがなくなるのが戦後に書かれた『斜陽』である。そして、その先にあるのが本書『グロテスク』だというのは買いかぶり過ぎだろうか。桐野夏生はそのことを意識していただろうか。私にはしていたような気がするのである。2017/05/16
明智紫苑
281
再読。女の怖さや醜さを描くのに、わざわざ物理的暴力描写に依存する必要などないという好例。一応は東電OL事件がモチーフという事になっているから、本来ならば実際の事件とは無関係の「元美少女」ユリコの存在は蛇足のハズだけど、むしろ「真のヒロイン」というべき存在感がある。もしかすると、桐野氏が本当に一番描きたかったのは東電OLの分身和恵ではなく、他ならぬユリコだったのかもしれない。そのユリコの姉であるメインヒロイン「わたし」と他の女性キャラクターたちとの関係は、まさしく「逆百合小説」だと言える。2016/05/22
zero1
260
全ページに蔓延るドロドロの悪意。事件が起きるのは必然で、起きないのは幸運なだけ。現代社会は微妙なバランスの上に成り立っていることを思い知る。東電OL殺人事件(後述)をベースにした桐野らしい闇を描いた重苦しい残酷な作品。語り手として登場したエリコの姉と和恵。この3人の繋がりがメインでミツルも絡む。クラスカーストが蔓延る有名校にいた女性たちは何故、身体を売るようになったのか?読者の男女差は感想に違いをもたらすか。この後、どう殺人に結びつくのか?下巻に続く。ダメージが残るため、桐野作品はとても続けては読めない。2020/01/31
W-G
241
スローペースで始まり、上巻の真ん中辺りからグイグイ引き込まれていく。詳しい感想は下巻で。
ehirano1
231
実は人間の暗部を見るのが怖くて(=嫌な気持になるのが怖くて)、1年も積読していた本書についに手を出すことに。上巻からして既に圧巻。この本は人間の何か(多分、深部にあって理性によってあんまり表には出ないようになっている”何か”)を刺激します。ある意味注意を要する本なのかもしれません。しかし、いや、だからこそ引き込まれます、いやいや引きずり込まれます。下巻は一体どうなっていくんでしょうか。2018/05/05