出版社内容情報
初のヨーロッパ外遊後、原敬首相暗殺、関東大震災、虎の門事件などを経て、ついに天皇の座につく裕仁。著者畢生の傑作評伝第二部。
内容説明
「彼の人は、この地において、その人生のなかでもっとも甘美な時の一つをもった」。大正十年、皇太子裕仁は初の欧州外遊で自由の味を知る。しかしその青春は早すぎる終焉を迎えた。帰国後、原敬首相暗殺、関東大震災、虎の門事件などが続発し、世情が不穏の相を濃くする中、やがて大正天皇が崩御。ついに裕仁の時代が訪れる。
目次
皇太子のマナー教育
イギリスの立憲君主制
戦禍の教訓
福祉国家という課題
英国との連帯
美しき田園
共和国フランス
ローマ法王との邂逅
原敬暗殺
摂政就任
関東大震災
虎の門事件
婚礼のかげで
新婚の日々
大正の終焉
著者等紹介
福田和也[フクダカズヤ]
1960年、東京生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科卒業。同大学院文学研究科仏文学専攻修士課程修了。現在、慶應義塾大学教授。文芸評論家として文壇、論壇で活躍中。93年『日本の家郷』で三島由紀夫賞、96年『甘美な人生』で平林たい子文学賞、2002年『地ひらく石原莞爾と昭和の夢』で山本七平賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じゅむろりん
18
おりしも「生前退位」が話題になっているいま読了。皇太子裕仁の欧州外遊、原敬暗殺、摂政就任、関東大震災、虎ノ門事件、婚礼の儀などを時代背景とともになぞる。彼の人にとっての青春は激動の時代とともに終わりを告げ、後戻りできない運命の中へと身を置くことに。ちなみに第1部を読んだのが去年の今頃。年に1冊ペース・・・。2016/07/23
雨猫
7
彼の人はヨーロッパ外遊でひと時の自由で楽しい青春を味わう。原敬、大隈重信が亡くなる。第1次世界大戦後のワシントン会議では世界的に軍縮の流れになるがそれから20年もしないうちに第2次世界大戦が開戦されたのは皮肉なことだ。1923年には関東大震災に襲われ流言の流布、朝鮮人数千人が殺傷された。翌年には松方正義が亡くなる。そんな中、彼の人は後の皇后良子を迎える。そして大正天皇の崩御。昭和の直前、きな臭さが漂ってくるようだ。知識の無さゆえちょっと大変な読書になったが第3部からが楽しみである。☆4つ 2015/01/13
ひこまる
5
この巻はまさに激動の大正史。その中で皇太子は人間的にも立憲君主としても礎を築いてゆくが、外遊先のイギリスで数日間牧歌的な田舎の居城に滞在していたくだりが一番良かった。そんな穏やかな環境で研究生活に打ち込めたら彼の人にとってどれだけ幸せだったかと思うのだが、時代がそれを許さない・・・2012/09/09
あらあらら
4
外遊を経験するところから震災、婚姻、即位と慌ただしくなった時期の話。2022/02/14
nagoyan
4
優。前半の裕仁皇太子の渡欧と後半の関東震災前後の原暗殺、大杉栄虐殺、虎の門事件と物上騒然とした大正時代の末を描く。元勲・元老やそれに次ぐ有力政治家が世を去り、裕仁摂政宮の周囲は婚礼等の華やかさはあるものの、どこか不吉さを感じさせ、また、もの寂しくもある。普選が達成されたとたんに、天皇・皇室が政治のイシューとして、より直截に言えば政争の具として登場したと著者はいう。そのとき、「彼の人」の周りにはその流れを押しとどめる力量のある者はすでにいなかった。著者は、昭和天皇の「孤独」がいかに用意されたかを示している。2011/07/22