内容説明
「文学史上に高く聳え立つ漱石や荷風や朔太郎や直哉というような偉人たちの落第列伝を書いた後に、私自身の落第話を書くのは、じつのところ甚だ気が引けるのであるが、それでもやっぱり書いてみたくなった」(本分より)。古今東西の恋歌から、男女の屁の考察まで、連句のごとく融通無碍に展開するリンボウ先生浮世談義。
目次
下手の横好き
誰かは切らん恋の道
死ぬる志
何を以て書くか
いまを限りの文
屁池物語
商業会話の法
落第の勧め
私の落第
初心〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
isao_key
12
『諸君!』1995年8月号~1997年7月号に掲載されたエッセイを単行本化のち、文庫化される。絶対に読むべき本などとは異なり、なんとなく読んでみようかという類の本。肩ひじ張らずに気楽に読め、ちゃんと教養が付くのだから、ありがたい本である。本書でも「屁池物語」という題で『大鏡』以来、日本文学における屁こきの話が語られる。まったくもってどうでもいい話なのだが、リンボウ先生の手にかかると、素敵な薀蓄と変わる。屁を「おなら」という言い方はもともとは女房詞で、「御鳴し」を下略して言ったのが「おなら」だったという。2016/07/14
アルゴン
5
★★★★ 単なるエッセイと甘く見ていましたが、漱石と鴎外の俳句の比較に始まり、恋歌の考察、屁の考察まで、歴史上のあらゆる書物を用いて格調高いことが述べられています。良いエッセイというのは読みやすく下世話な話でも格調高くためになるものですね。2018/01/23