内容説明
「男娼たちは、夕方になると不死鳥のように深い眠りからさめて、夜にむかって衣替えしようとしている」(『クリストファー男娼窟』)。天才舞踏家、刺青の女、新宿の夜に沈む男たち、ごく当たり前に見える夫と妻…、誰しも心の中は、ひたむきで、邪悪で、哀しい。山田詠美さんが厳選した、美しく妖しく怖い八つの物語。
著者等紹介
山田詠美[ヤマダエイミ]
1959年、東京生まれ。85年、黒人の男との愛と破局を描いた「ベッドタイムアイズ」(文藝賞受賞)で衝撃的デビュー。87年、『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で第97回直木賞、89年、『風葬の教室』で平林たい子賞、91年、『トラッシュ』で女流文学賞、96年、『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2001年、『A2Z』で読売文学賞、05年、『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Mina
54
山田詠美さんが選ぶ「大人の舌に相応しい幸せな哀しみの味」アンソロジー。いかにも詠美さんらしいアダルトでやるせない作品がほとんど。芥川賞受賞作家も多い。「中上健次・化粧」は何と寂しく切ないのか… その陰鬱さ、赤く染まった美しく生々しい世界に吸い込まれてしまうよう。予知夢を見る妻の話「遠藤周作・霧の中の声」妻に共感してしまう部分もあり背筋が寒くなる。皮膚にできた消えないひび割れの話「八木義徳・異物」は可笑しくて好み。草間彌生・クリストファー男娼窟、河野多恵子・骨の肉、庄野潤三・愛撫も美味しくいただきました。2015/01/28
ピロ麻呂
34
あとがきの山田詠美氏の言葉「小説は料理に似ている」…僕も共感。焼肉のあとのデザートみたいに、ミステリーのあとは恋愛ものが読みたくなる。長編の後は短編が読みたくなる。このアンソロジーは「昭和」 を味わえる短編ばかりで、アジの干物ってところかな(^o^)遠藤周作「霧の中の声」がたいへんおいしゅうございました♪2020/08/22
メタボン
32
☆☆☆☆ 玄人好みの短篇集。上手いなあと感じる作品が多かった。河野多恵子「骨の肉」はねっとりと官能的な食事描写が上手い。庄野潤三「愛撫」。執拗なまでの夫の問いかけはきっと自らの性欲を喚起させるためのものであり、それを無意識に表出させる妻がバイオリンの先生から受けた「愛撫」が淫靡。八木義徳「異物」から感じる「いずさ」(北海道弁で違和感のようなもの)は面白い。赤江瀑「ニジンスキーの手」は題材は面白いが少し稚拙に感じる部分もあった。遠藤周作「霧の中の声」は夢に対する思い込みが死へ誘うという構成が上手く怖い。2021/03/16
カ
29
どの短編も読みごたえがあり面白かったです。哀しい話が元で、どれも筋がよく似ていてどの著者にも興味を持った。山田詠美さんの本も読みたくなりました。2015/01/28
あつひめ
26
あとがきに書かれている、山田さんの言葉・・・小説は料理・・・。なんとなく納得してしまいました。アンソロジーはバイキング???和洋折衷なんでもござれで同じような食味のものは一つもない。似ているとすれば・・・人生は生臭いものという感じだろうか。生臭い中に哀しみも幸せも同居している。人の心らしい粘っこいものが並んだ気がする。2010/11/03