出版社内容情報
その名はサイレントマン。神に祈りをささげる殺人者──。戦後の闇社会を震撼させた男の、哀しくも一途な生涯を描いた傑作長篇。
内容説明
夜鷹の女に産み落とされ、浅草の侠客・浜嶋辰三に育てられた神崎武美は、辰三をただひとりの親とあがめ、生涯の忠誠を誓う。親の望むがままに敵を葬り、闇社会を震撼させる暗殺者となった武美に、神は、キリストは、救いの手をさしのべるのか―。稀代の殺人者の生涯を描き、なお清々しい余韻を残す大河長篇。
著者等紹介
伊集院静[イジュウインシズカ]
昭和25(1950)年、山口県生まれ。立教大学文学部日本文学科卒業。平成3(1991)年、「乳房」で第12回吉川英治文学新人賞受賞。4年、「受け月」で第107回直木賞受賞。6年、「機関車先生」で第7回柴田錬三郎賞、14年、「ごろごろ」で第36回吉川英治文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あすなろ
96
伊集院氏が描くサーガ的任侠道。元々、伊集院氏が描く任侠を読みたくてこの作品に興味があった。男が男に惚れる、ゾクっと来るというのが優れた任侠を描いた小説や映画であるとするならば、この伊集院版任侠道は流石。そして、キチンと伊集院氏の筆だと感じられることも流石。サーガ作風の場合は、上下巻に分けて長く描いてという希望が募ることや、逆に冗長に感じること等あるが、それも僕は感じない。舞台と時代変化を上手く篇分けして描いているからか。そして、何より魅力的な主人公と当初からインパクト強く惹きつけられるその母の存在からだ。2020/11/01
GAKU
37
昭和の初期に夜鷹の子として生まれ、浅草で売出中の侠客浜嶋辰三に育てられた、神崎武美の幼少から晩年までの一代記。武美自身侠客として辰三のために命を張って、何度も修羅場をくぐり抜けていく。冷静沈着に敵対するヤクザを殺して行く反面、澄んだ目を持ち弱者には優しい武美。まさしく弱きを助け強きを挫く侠客の中の侠客。たとえ裏切られても最期まで辰三を親と仰ぐ、武美の生き方が格好良くて哀しかった。 2024/07/31
inami
34
◉読書 ★3.5 著者の作品は初読です。初読の場合、はずれがないように(笑)ネットでおすすめなどを調べてから読んでいますが、本書は上位にランキングされていました。任侠(どちらかというとヤクザ)の世界の物語ですが、自分は嫌いな方ではないので(笑)スラスラ読めました。血の繋がりのない育ての親(=組長)に忠誠を誓い、生涯に渡り暗殺者(刑務所25年)として生き抜くことになる主人公、西の最大暴力団との対立抗争のなかで親に売られても信念を貫き通す・・ところどころ「義」を感じさせられる場面ではジーンときました。2022/02/21
おくりゆう
25
多分、本の雑誌だったと思うのですが、で見かけて以来、積んでいた一冊。古い時代の侠客の男の一代記が視点を変えた短篇から紡がれるお話でお話自体は設定からバイオレンスありのヤクザ物なのですが、どこか静謐で余韻すら感じさせる仕上がりで中々ひきこまれて一気読み。読み応えある長編でした。2015/09/23
きんてつ
24
戦前、戦後を『親』の為、親を守る為だけに生きてきたヤクザの話。只、純粋に敵対するものを殺していく。ただ親のために、ちょっと疲れるかなー2014/11/09