内容説明
新しい先生は、口をきかんのじゃ…。舞台は戦争の傷跡の残る昭和三十年代、瀬戸内の葉名島。この小さな島の、生徒わずか七人の小学校に、北海道から代用教員がやってきた。口がきけない「機関車先生」。けれどもそれはかけがえのない出会いだった…。青年教師と島の人々との暖かな絆を描く、第七回柴田錬三郎賞受賞作。
著者等紹介
伊集院静[イジュウインシズカ]
昭和25(1950)年、山口県生まれ。立教大学文学部日本文学科卒業。平成3(1991)年、「乳房」で第12回吉川英治文学新人賞受賞。4年、「受け月」で第107回直木賞受賞。6年、「機関車先生」で第7回柴田錬三郎賞、14年、「ごろごろ」で第36回吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
104
第7回柴田錬三郎賞受賞作。北海道から瀬戸内海の小さな島の小学校に代用教員としてやってきた新しい先生は口がきけない。口がきけないから「機関車先生」。話せないながらも、島の人々との交流があたたかくて、人は言葉がなくても絆を作れることを教えてくれました。言葉以上に大切なことが詰まっています。様々なことがあり、傷つくことも多いけれど、それ以上に幸せがあるということが伝わってくるような作品でした。2016/10/29
youmar Jr.
17
声の出せない松岡先生と、修平や、葉名島の小学生たちが送る絆をテーマにしたものがたりです。 2020/05/21
yuki
17
読み終えて、丁度いまの季節のような、ひと夏が終わった虚ろなさみしさが胸に残っています。一見あっさりしているように思えるけれども、大事なものが刻まれるような、いい作品でした。2019/09/01
わった
8
口がきけないという先生が小さな島に代用教員として赴任し、話せないながらも子供たちや島民とコミュニケーションを取りながら春から夏の数か月間を過ごすという物語です。振り仮名が振ってあるので小・中学生にも読めるように発行されたものだと思うのですが、内容はとても深いものでした。本当の平和とは何か、強さとは何か。言葉がなくても自分の思いは人に伝えられる機関車先生がたくさんの事を教えてくれます。自分の中にこの小説のたくさんの言葉が残りました。2015/07/20
黒猫
3
子どもの国語の読解に、本書の一部が使われていたので興味を持ち本を購入。一時期話題になったな?くらいの感じで読み始めたけど、すごく色々と考えさせられる本だった。舞台は昭和30年代の瀬戸内海の島。島での暮らしや、そこでの人間関係、太平洋戦争、障害者の話が子どもたちの成長とともに書いてある。図らずも、今日という日にこの本を読了できたのは良かった。作者の文庫本の後書きに引用で「今の時代を生きる若者たちに戦争責任はない。ただし将来、戦争をくり返さないための責任はある」という一文はとても印象に残った。2022/08/06