内容説明
けだるくて退屈な夏休み。高校生のぼくは不思議な魅力を持つ少女、晶子と出会う。晶子、親友の田中くん、そしてそれぞれの家庭や周囲の大人たちを傍観しながら、ぼくの夏が終わっていく…。1960年代の北関東の小さな街を舞台に、清冽な文体で描かれた、ノスタルジックで透明感に満ちた青春小説の傑作。
著者等紹介
樋口有介[ヒグチユウスケ]
1950年群馬県生まれ。業界紙記者などを経て、88年『ぼくと、ぼくらの夏』で第6回サントリーミステリー大賞読者賞を受賞し、デビュー。90年『風少女』で直木賞候補となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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巨峰
71
村上春樹ファンの僕としては、この小説が極めて初期の村上氏の小説と同じ雰囲気を纏っているように感じた。高校生、60年代後半、夏、酔っ払い運転の後の事故、ちょっと旨いことをいいたがる主人公。村上春樹と同世代のこの作家さんの小説を初めて読んだけど、逆に村上の小説が単独で存在してるんじゃなくてある時代の産物なんだなと思った。青い空、暑い夏、それとは似合わない同級生の死。僕が生きた時代とは異なる神話の時代。2019/02/19
S.Mori
8
素晴らしい青春小説でした。樋口さんはミステリ作家として活躍している方ですが、この小説の中にはミステリの要素はありません。60年代の地方の青春が瑞々しい筆致で描かれています。主人公のぼくが抱く社会に対する屈折した感情は、私も昔感じていました。女の子に対するナイーブな気持ちが微笑ましかったです。感傷を排した物語が結末でがらりと変わります。とめどなく涙を流すぼくが痛々しくて、この部分は胸に迫りました。詩的な題の「八月の舟」が気に入っています。この舟の中にぼくは、自分の青春も載せたのだと思います。2019/07/15
ピップ
8
青春小説。残念ながらイマイチ。主人公の研一君が合いませんでした。自分の行動を大人たちは寛大な心で受け止めているのに、研一君は少しでも嫌なことがあったらキレそう、というような心の狭さ、器の小ささを感じた。何を考えているのかもわからないし。正直なところ、この本で起こったいくつかの事件を、研一君が将来プラス変えることができる、と期待できないので、なんとなく悶々としてしまった。2017/10/17
ひで
6
高校生の少しノスタルジックな感じのする青春小説。恋愛や家庭の問題、悩み多き高校生の物語。親友との会話とか、淡々としていてそれがかえって小説全体の寂しさとか、ほんわかした雰囲気が出ていた。ちょっと淡白過ぎる感じもしましたけど・・・2015/08/29
なつみ
5
淡々とした描写の中にいくつか印象に残る文章がありました。うだるような夏の暑さがひしひしと伝わる一冊です。この作者の違う本も読んでみたいな..2014/03/15