出版社内容情報
カリフォルニアのイチゴ畑で働く兄のもとへ身をよせた著者の、土と汗まみれの青春。これほど真率に語られたアメリカ物語はない!
内容説明
キャリフォーニ。ことばの壊れた日系人たちにそう呼びならわされた土地。その一画のイチゴ農場で働く長兄を頼り、移民船「あふりか丸」で渡米した作者は、当時十八歳。なけなしの100ドルが所持金の全て。しかし、そこは夢をつなぐ土地ではなく、違和と混乱の世界だった。大宅賞を受賞した、かつてない真率無類なアメリカ青春記。
目次
1 アメリカまでの道
2 僕は農地に立っていた
3 キャンパスのサムライ
4 ストロベリー農場の日々
5 それぞれの国境
6 畑の尊皇攘夷
7 人はなぜアメリカを求めるのか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
James Hayashi
10
1965年横浜より「あふりか丸」という移民船にて渡米。海外雄飛を目指してカリフォルニアに来たらしいが、並々ならぬ苦労をしているらしい。自分もそうだが、文中はジャパニーズイングリッシュで会話され、様子がよく伝わってくる。イチゴは今でも手作業で収穫だろうから、腰が痛く大変だろう。夢を追っている間はあっという間にすぎていくが、現実を感じると悩みばかりになる。そんな青春の一コマを見せられた。自分より一足早く渡米された諸先輩がたに最敬礼。2014/04/22
学生
5
大人のEテレタイムマシン2025/04/05
うたまる
4
「出てこい、この広大なアメリカ大陸に出てこい」……1965年、高校卒業と同時に兄が働くアメリカに向った著者の自叙伝。ベトナム戦争や黒人運動、それに日系移民社会を背景に、著者自身の青春が語られる。読み処は実体験の合間合間に挿入されるアメリカについての考察。あくまでも個人的経験を基にしたものなので普遍性は推して知るべしだが、多民族国家ならではの国民性や差別についてちょっとした知見は得ることができる。尚、一番納得感があったのは、行き過ぎた拝金主義と競争主義からなるこの国を”賭場”と評したところ。言い得て妙だ。2019/10/03
HIRO1970
4
★☆★カリフォルニアの小説を読みたいなと思っていたら、この本と出合いました。良いですね~。時代背景は1965年。農業研修生。子どもの頃に読んだ植村直己さんの登山資金捻出の為のワーカー話を思い出しました。たしかカリフォルニアの農場もありましたよね。下巻が楽しみです。2013/07/20
pookkun
4
言ってみれば「同じ戦後」なのに、今と「当時」で、こんなにも空気が異なるものなのかと愕然としました。カルフォルニアに住む日本人の持つ飽くなき向上精神は、明らかに現代の日本人にはなきものであると思いました。地理的にも社会的にもはるかに広大なアメリカの下で、言ってみれば彼らはただイチゴを育てているだけなのに、心中には夢と希望が詰まっていました。彼らにも一喜一憂のドラマがあるにはあるけれど、奥底にあるのは、やはり夢と希望なのだと思わされました。2011/07/05