内容説明
脳血栓で倒れた母を自宅介護して10年、限界を感じた著者は、決断をする。母を老人ホームに入れるのだ。そこは、恋愛OK、煙草も飲酒も外泊も自由の、「高齢者専用長期滞在ホテル」だった。侠気の女社長、健気なヘルパー、個性的な入居者たちとの交流を通じて、人が老いて死にゆくことの真実を描いた、感動のノンフィクション。
目次
我が家の決断
シルバーヴィラ向山へ
ホームの生活が始まった
ふたたび父と同居する
花ちゃんクラブの面々
思い出の草津温泉旅行
村田さんのお葬式
母の容態
介護保険狂騒曲
お花見の夜
ミニコミを出そう
アプランドルと花ちゃんショップ
母の死
著者等紹介
久田恵[ヒサダメグミ]
1947年、北海道室蘭市生まれ。上智大学文学部社会学科中退。1990年『フィリッピーナを愛した男たち』で第21回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紫羊
13
ノンフィクション作家の著者が、自身の母親を介護する中で、シルバーヴィラ向山というユニークな有料老人ホームと出会い、そこに母親を託し看取るまでの記録である。この本が書かれたのが、ちょうど介護保険が始まった時期と重なっていて、制度に振り回される入居者とその家族、施設と職員の悲喜こもごもも描かれている。その後、何度かの制度改正を経て、今なお航路の定まらない介護保険。今後長く続くことになる超高齢社会に、私たちは、何を目指して進んでゆけば良いのか等々、多くのことを考えさせられる、しかも滅法面白くもある一冊。2013/09/27
デジ姫
7
手持ちの本を再読。7年前に亡くなった両親とダブり忘れていた事を随分思い出された。人工透析の手術から退院した夕方、お風呂場で脳梗塞おこし、失語症。花とはわかっても花の名前が思い出せない、単語3つくらいの会話しかできなくなった母が当時どのように考えていたか想像もできないがリハビリ入院3年も経つと体も硬直し会うのが辛くなった。母が亡くなった7ヶ月後、肺癌余命3ヶ月と言われた父もひと月もしないうちに旅立った。2016/09/01
Melody_Nelson
5
何となく、舞台になっている高齢者施設の宣伝のようにもなっているが、それでも、この施設は素晴らしいのだろうなと思う。著者の母親の介護の話から始まるが、著者自身の仕事と子育ての苦労も加わり、壮絶だった様子が感じられる。母親が施設に移ってからは、その施設の人々の過去の話や様子などが描かれているが、あまりにバラエティに富んでおり、夢中になって読んでしまった。ちょうど介護保険制度が始まり、混乱している様子も見て取れる。自分もこういうところで最期はお世話になりたいなと思わせてくれた。お母様とのお別れのシーンには涙…。2024/08/26
sai
2
脳梗塞で倒れた母親を10年間自宅介護し、2年半を有料老人ホームで看取るまで介護を続けた筆者の後半の2年半の介護記。抑制の利いたきびきびした文体と乾いたユーモアのセンスでも覆いきれない苦悩や哀しみがある。介護はもう逃げられない課題だけど、やりおおせた方の生の声に近い記録を感情の洪水ではなく読めることはありがたい。自分には「がんばろうかな」と思えたいい記録でした。2013/02/22
雛
2
幸せな介護。2012/02/07