出版社内容情報
京の都で起こる怪しく妖しい事件に、お馴染み若き陰陽師・安倍晴明と横笛の名手・源博雅が挑む人気シリーズ最新作。全8篇を収録。
内容説明
盲目の琵琶法師、蝉丸は美しくも怖ろしい女に取り憑かれていた。空ざまに逆立つ髪、睨むよう見つめる眼―その異様なる気配を感じながらも、蝉丸は敢えて女を落とさず憑く侭にしているというのだが…。一体なぜ?女を哀れむ蝉丸が、ある夜、晴明と博雅を前に語り始めたその哀しい過去とは!?「逆髪の女」など全八篇を収録。
著者等紹介
夢枕獏[ユメマクラバク]
昭和26(1951)年、神奈川県小田原市生れ。48年、東海大学日本文学科卒業。52年、「奇想天外」誌に「カエルの死」を書いてデビュー。『上弦の月を喰べる獅子』で、平成元年に第10回日本SF大賞、2年に第21回星雲賞(日本長編部門)を受賞。3年に第22回星雲賞(日本短編部門)を「上段の突きを喰らう猪獅子」で受賞。『神々の山嶺』で、10年に第11回柴田錬三郎賞を受賞。『大江戸釣客伝』で、23年に第39回泉鏡花文学賞、第5回舟橋聖一文学賞、翌年に第46回吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
189
陰陽師シリーズ30周年記念完読プロジェクト https://bookmeter.com/users/512174/bookcases/11399200?sort=book_count&order=desc 今回は、第十四巻です。「天鼓の巻」と言うよりも「童子の巻」という感じでした。オススメは『瓶博士』&『器』です。続いて第十五巻、「陰陽師 醍醐ノ巻」へ「ゆくか」「ゆこう」「ゆこう」 https://books.bunshun.jp/sp/onmyoji2019/05/24
KAZOO
134
この作品には8つの話があり、表紙だけ見るとかなり怖そうですが、恐ろしいという感じよりもなにか音楽を楽しんだり自然をめでたりするのが多く心が和まされます。今回は珍しく道満が出てきませんでした。2017/10/02
うりぼう
58
あとがきが、すっかりつぶやきに変わる。俳句と詩、その時の想いをただ綴っており、獏さん、独特の語り口で、並べてあるだけ。陰陽師と何の脈絡もないが、わがかなしみが、一輪の梅ほどだと。そこから生まれた作品もその程度の哀しみを湛えている。でも、一輪の梅の豊かさを持ち、その広がりは冬の冴えた空気の中に沁んとあり、強さを持つ。蝉丸の草凪を想う強さであり、霹靂神の天鼓であり、康子の哀しみである。素直な心を持つ博正は、その存在自体がトリックスターであり、晴明にとって心の平安であり、獏さんにとって憧れの存在。親父節である。2012/07/17
アイゼナハ@灯れ松明の火
52
『ゆくか』『ゆこう』『ゆこう』―このやり取りだけでいつだって晴明と博雅の世界に連れて行ってもらえる至福の時間。今回もガッツリ堪能させていただきました。今回は蝉丸法師にスポットの当たる短篇が幾つかあって『逆髪の女(ひと)』も哀しくて素敵なんだけれども、個人的には断然『霹靂神(はたたがみ)』が好みかな。なんかもう、晴明この果報者!!って感じが何とも言えず…好きだなぁ。いつまでも終わってほしくないシリーズの一つです。2012/07/18
るぴん
45
シリーズ10作目。人という器は、あまりに多くの悲しみに満たされると、心を亡くしてしまうもの。深い悲しみに溺れてしまった人間を描いた「器」、怒りをたたえた逆髪の女に取り憑かれながら、払おうとはしない蝉丸の真意「逆髪の女」の2編が、切なく哀しく心に響く。/「おまえがたよられたということは、この晴明がたよられたということと同じぞ、博雅」まるで2人は一心同体のような台詞(*´艸`)♪2020/05/13