出版社内容情報
この世に、おまえがいてよかったと、おれはしみじみと今、そう思っているのだよ、晴明──。
晴明の呪、博雅の笛が京の闇に響きわたる・・・。またしても都に起きる妖しげな事件の数々。晴明と博雅がその因果を探り、鮮やかに解決。「月突(つくづく)法師」「花占の女」など9篇を収録!
内容説明
博雅のもとを夜な夜な訪れる異国の美しい女性。語れども声は聞こえず、哀しい眼で見つめ、翌朝には、残り香とともに消えるその女が気になった博雅は、晴明に相談する。晴明は、帝より博雅が賜ったという、吉備真備が唐より持ち帰った音のならぬ琵琶に興味を惹かれる。果たして女性の正体は?「月琴姫」など全九篇を収録。
著者等紹介
夢枕獏[ユメマクラバク]
昭和26(1951)年、神奈川県小田原市生れ。48年、東海大学日本文学科卒業。52年、「奇想天外」誌に「カエルの死」を書いてデビュー。圧倒的な人気を博する「陰陽師」「魔獣狩り」「餓狼伝」の各シリーズをはじめ、山岳、冒険、ミステリー、幻想小説などの分野で広範な読者を魅了し続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
195
陰陽師シリーズ30周年記念完読プロジェクト https://bookmeter.com/users/512174/bookcases/11399200?sort=book_count&order=desc 今回は、第十二巻です。本巻で安倍晴明が初めて源博雅の自宅に行ったのではないでしょうか?オススメは、『月琴姫』&『浄蔵恋始末』です。続いて第十三巻、絵物語第三弾 「陰陽師 鉄輪」へ「ゆくか」「ゆこう」「ゆこう」 https://books.bunshun.jp/sp/onmyoji2019/05/21
KAZOO
126
長編「瀧夜叉姫」上下2巻を読んだあとなのでこの短篇9作はほっとした感じを受けました。自然や音曲あるいは人情の機微に触れたりするものが多かったように感じます。ほろりとした気持ちになるものが多いと思います。読み返す頻度も高くなるのでしょう。2017/09/26
眠る山猫屋
62
再読。とても良かった・・・。神仏に誘われるような物語から恋の昔語りまで。神宿るような月琴に愛される博雅。蝉や虹もまた、神々の一部、人間がそうであるように。ひとつところに心を据え置くならば、その本質は美しく(あるいは醜く)極められていくものなのかな。そして最後に語られる『浄蔵恋始末』がとても好きだ。数十年前の叶わなかった恋が静かに甦る、いや眠っていただけの忘れ難い想いが。浄蔵さまの大切な思い出は、変わらず生き続けていた。記憶じゃない、本人はそれと知らずとも。共に生きられなかった日々が、取り戻せますように。2019/07/22
るぴん
48
9作目。いかに博雅が優れた楽人かというのがわかるエピソードが2編。神々に笛の音を所望され、阮咸に宿る精霊には愛され、陰陽師でもないのに式神まで作ってしまうなんて。博雅も罪作りな男よ。『瀧夜叉姫』で活躍した浄蔵の若気の至りの話「浄蔵恋始末」もいい。浄蔵ですら煩悩は捨てられないもの。人は結局人なんだと思わされた。/「この世に、おまえがいてよかったと、おれはしみじみと今、そう思っているのだよ、晴明ー」「馬鹿…/そのようなことを、ふいに言うものではない、博雅ー」完全に愛の告白だよなぁ(*´艸`)♪2020/05/07
絳楸蘭
34
噎せるような濃密な自然の香りと見えないはずなのに綺羅綺羅輝く笛の音や月光、陽光などの色彩に溢れる清明の屋敷で酒をかたむける二人の姿が印象的な1冊。どんな時でも自然を思い心揺らす博雅どのとそんな博雅どのをそれでいいと受けとめる清明の関係が心地よい。誰もが清濁併せ持って生きている。それが自然な姿なのだと言われたような気がする。2014/07/13