出版社内容情報
近代日本の「青春」を描いた司馬文学の金字塔。その雄篇にひそむ謎を、斬新な視点と平易な語り口で解き明かすファン必読の1冊。解説・内田樹
内容説明
日露戦争で勇名を馳せた秋山好古・真之兄弟と俳句・短歌の革新者である正岡子規を軸に、明治日本の「青春」を描いた司馬遼太郎の『坂の上の雲』。この雄篇が発表されたのが1968‐72年である点に着目し、そこに込められたメッセージを解き明かす。斬新な視点と平易な語り口で司馬文学の核心に迫る傑作評論。
目次
第1章 国家が「軽かった」時代
第2章 「お里」の回復
第3章 ナショナリストの原像
第4章 日英同盟と「封緘命令」
第5章 乃木将軍と鉄道改軌
第6章 「歴史的記憶」と脚気
第7章 「成って居らぬ」旅順攻略戦
第8章 戦争と「広報」
第9章 「三笠」の記憶と石炭
第10章 「天佑神助」と「無常」
著者等紹介
関川夏央[セキカワナツオ]
1949年、新潟県生まれ。上智大学外国語学部中退。神戸女学院大学客員教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
i-miya
43
2010.08.19 (あらすじ) (一) 名古屋の小学校に赴任中の好古、陸軍士官学校へ、上京。兄をたよりに上京する真之、文学志す。子規ときままな青春、やがて海軍兵学校。好古、フランス留学。(1)フランス騎兵の実態、(2)欧州の重層的戦史の堆積、を開眼。しかし、馬術はドイツ式。子規、肺結核。(二) M27、日清戦争、好古、旅順攻略作戦。1日で要塞を陥落。真之、威海衛で肉片と化す日本将兵。子規、帝大落第、陸褐南、「日本」従軍記者、戦場へ。帰国船中病勢悪化、療養帰省。2010/08/20
小太郎
21
「坂の上の雲」を読んだのが高校の時だから、ん十年も経ってしまったけれど、まったく知識がなかった(高校ではほとんど教えないですね)明治日本が初めて遭遇した日清、日露という近代戦の全貌が大変よく理解できました。またその勝利体験がその後のゆがんだ日本軍を生んで負けるべくして負けた太平洋戦争に向かわせる歴史の綾も見事に描き切った作品だと思いました。今までの司馬作品とは違った雰囲気も楽しめたのですが、この本はその辺りの事が微に入り細に入り解説されていて読みごたえがあります。司馬史観の見事な解説書だと感じました。2021/04/21
ひよピパパ
10
司馬遼太郎の『坂の上の雲』にまつわる裏話が満載。特に乃木希典に対する司馬の「無能」という評価に関して、その背景や福田恆存の反論等が紹介されていて勉強になる。巻末には『坂の上の雲』全8巻の読書案内もありよかった。 2019/06/30
よし
8
坂の上の雲を読んでから20年になるか。物語そのものは圧倒的に面白かった。特に、日露戦争の激戦・・二百三高地奪取の無謀ともいえる突撃。そして、日本海海戦デバルチック艦隊がどこを通るか、決断した東郷の「運」。その戦いを膨大な資料をもとに冷静に紐解いていって初めて解る真実。関川氏の論点に納得がいった。司馬作品をまた読み返したくなった。「健康であったはずの明治の40年がその後昭和20年に至る不健康な40年を何故生んだのか?」この問の答えは未だに解明されていない。2019/04/15
第9846号
7
坂の上の雲になぜ子規が主人公で出ていたのかの謎を解いてくれた本。また、坂の上の雲はナショナリズム高揚本に用いられる事があるが、司馬遼太郎は自分が所属した日本陸軍がなぜ人命を軽んじる組織となったか描くことが、執筆動機になっていることを、関川氏はアナウンスしている。これは、大切なことではないだろうか。2010/10/25