内容説明
築地のはずれの達也の店で、ひさしぶりに開かれた小学校のクラス会。40年前、達也は引っ越しが決まった百合を誘いボートで学校へ向かうが、教師に見つかり折檻される。別れの言葉も告げぬまま離ればなれとなった百合は現れるのか?表題作など、50代の男たちの揺れる心情を描いた大人の小説集。
著者等紹介
杉山隆男[スギヤマタカオ]
昭和27(1952)年、東京に生れる。一橋大学社会学部卒。読売新聞記者を経て著作活動に入る。昭和61年に『メディアの興亡』で第17回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。平成8(1996)年は自衛隊を取材した『兵士に聞け』で第9回新潮学芸賞を受賞。また、近年は小説にも積極的に取り組み、主な著書に『日本封印』『言問橋』などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヨノスケ
9
杉山隆男さんの短編集。7作品どれもが味わい深い作品である。その中でも、卒業写真は初回何か不穏な雰囲気が漂っていたが、終盤思わぬ展開に驚かされた。自分の記憶は自分のなかだけにあるものではないことに、今更ながら気付かされる。優しさとノスタルジックが存分に味わえる素晴らしい作品に出会えた。2025/03/15
kousei
7
初読み、著者はノンフィクションでは有名な方のようです。あまり読まれていないようですが、短編7作品を堪能。正統派小説で、主人公の心情や情景描写が良く、次の作品に移るときも出だしの数行で即引き込む技術も確かで上手いなあと感じた。もっと売れて良いのに。2021/07/07
MIKETOM
6
帯に「山本周五郎、藤沢周平を彷彿とさせる現代小説」なんて書いてある。あまり読んだことはないがなんとなくわかるような気がする。他に「50代の男たちの揺れる心情を描いた極上の大人の小説集」とも。そんな短編集のようだ。表題作。40年前に転校していった少女、同窓会には出席の返事が。しかしなかなか現れない。やっぱり来ないのだろうか…。40年前の追憶とともに当時の銀座の情景が(見たこともないのに)頭に浮かんでくるような小説。自分の幼少の頃の思い出もまた。『走る男』運命から逃げ回るヘタレ男に下された家族の決断。→2024/11/11