文春文庫
陽炎の。

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  • サイズ 文庫判/ページ数 226p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784167458010
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

呉服問屋の営業マンとしてデパートに派遣されていた32歳の「俺」は、客用のトイレに入りたばこを吸っていたのが見つかりクビになる。職業安定所に通い、失業仲間と交流するようにもなるのだが…。徐々に壊れゆく男の姿を通して、現代社会を鋭く捉えた表題作。著者の故郷である新潟の海を舞台にした自伝的作品など全4篇収録。

著者等紹介

藤沢周[フジサワシュウ]
1959年、新潟県生まれ。法政大学文学部卒業。書評紙「図書新聞」の編集者を経て、93年「ゾーンを左に曲がれ」で作家デビュー。98年「ブエノスアイレス午前零時」で第119回芥川賞受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

masa

50
劣等生が本当は仲間を出し抜きたい気持ちを抱えながら徒党を組む。例えばお見合いで失敗続きな人が集まって「独身が気楽でいいよ」なんて言いながら、虎視眈々と色気づいたりするように。これって脱童貞や脱親元、様々な脱●●というシチュエーションに置き換え可能で、そう考えると身に覚えがある人は少なくないかも知れない。表題作は真夏の職安で、そんなコンプレックスが行き場なく吹き溜まっていく様を、一向に前へ進まない物語全体で比喩しているようだ。いつだって終わりは唐突で、狂った現実からの失踪を試しても、世界は揺るぎなく強固だ。2017/08/14

hit4papa

44
4作品が収録された短編集です。些細なことから会社をクビになりハローワークに通う男の日々を描いたタイトル作は、出口なしの精神的な底辺感が寒々しいかぎりです。その他、二十年前に死んだ父親が過去の記憶に誘う「海で何をしていた?」、少年の中の黒い部分に共感する自伝的作品(?)「光と砂」、破滅的な壊れっぷりがノワールの如し「事情聴取」です。本作品集の中では、タイトル作に次いで、複雑に入り組んだ展開を混乱させることなく(ぎりぎり?)仕上げた「事情聴取」が良いでしょうか。総じて水準の高い作品が収められていると思います。2022/02/14

harass

12
著者の自伝的要素のある短篇を含む本。この作家の本は四冊目でちょっとうーんと感じるようになった。文体は好きなのだがもどかしい。ひどい印象批評をやっていて我ながら反省するが。短編「事情聴取」は面白く思えた。全体像が次第にわかってくるサスペンス的な手法と酒場の描写が良い。予定調和をぶち壊すアナーキーさが素晴らしい。泥酔って怖い。2013/06/20

8
作者の北村透谷研究の講演を読み、作者とこの本に興味を持ち、手に取りました。表現にちょっと自分には合わない部分がありましたが、話自体は面白く、4編共読みやすいサイズで、次の展開が気になりながらもあっという間に読み終えました。良い意味での不安定さが心地よいですね。2015/05/26

anna

7
見事に重苦しい短編集。四編とも救いはないですw。前の方のレビューに自叙伝的な…と書いてありましたが、藤沢さんの脳内が心配です(^^;とくに最後の事情聴取で描かれてたホームレスの世界とか…怖いです2017/07/02

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