出版社内容情報
数奇な運命の女優川上貞奴、愛したのは年下ばかりの平塚らいてう、『山梔』の著者野溝七生子ら大正女性の現代にも通じる生き様。
内容説明
大正時代、黒々と伸ばした髪を切ることは、女をやめるに等しい大胆な行為だった。男性社会を力強く生きると高らかに宣言したモダンガールたちは、次々と洋行したり、恋の炎に身を焦がしたり…。望月百合子、ささきふさ、武林文子、野溝七生子ら42人の強欲な「快女」たちの生きかた、愛しかた。
目次
第1章 洋行したモダンガール
第2章 だれかのミューズ
第3章 「青鞜」と妻の座
第4章 女しか愛せなかった?
第5章 芸で立つ
第6章 女人芸術からアナキズムへ
第7章 独歩の人
著者等紹介
森まゆみ[モリマユミ]
1954年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。作家。1984年より2009年まで、地域雑誌「谷中・根津・千駄木」編集人。1998年『鴎外の坂』(新潮文庫)で芸術選奨文部大臣新人賞受賞。2003年『「即興詩人」のイタリア』(講談社)でJTB紀行文学大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヒロミ
58
大正時代を生き抜いたそれぞれの逞しさを持った女性たち42人をえがいた列伝。一篇が短いので読み応えがないかと思っていたが読みやすく面白かった!昨今の不倫報道なんて問題にならないくらい彼女たちの恋愛遍歴は波瀾万丈で人間関係が重複していて複雑だ。私が印象に残っているのは武林文子。昔の女性でここまで自堕落ででたらめで快楽主義な生き方とは絶句する。感動したのは川上貞奴最後の恋人、福沢桃介の台詞。「ねえ、僕が川上の世話を焼きすぎるといって心配したり、かれこれいうものがあるけれど、男は女に惚れているに限ると思うのです」2016/04/22
kaoriction@感想&本読みやや復活傾向
24
【再読】先日の嵐山光三郎『文人悪妻』が物足りなく、消化不良にて軽く再読。『明治快女伝』と迷ったが、取り上げられている人物が多数被っていたのでこちらを。本作の方が「文人悪妻」の名に相応しいような気がしてしまう。「飯田にいぢめられてゐると、山本のいいところが浮かんで来るの、山本のところへ行くと、山本がものたりなくなるのよ」これ!こういうのを「悪妻」でも描いて欲しかったのよ。平林たい子が二人の男の間を行ったり来たりするダメっぷり。巻末の年表といい、人物相関図、「この本から広がる読書案内」など、文句なしの軍配。2019/09/05
浅香山三郎
15
帯に「大正時代、断髪は大きな決意表明だった!」と惹句がある。大正時代と断髪といふ組み合はせを「発見」して見ると、様々な分野で女性が活躍しはじめる様子が浮かび上がる。そのセレクトが森まゆみらしいし、東京の土地勘を生かした叙述の巧さはさすがだ。武林無想庵の妻文子、亡命ロシア人小野アンナ、革命の歌人金子文子等々、強烈な或ひは複雑な魅力をもつた女性らを通して、近代日本における女性の新しい生き方の模索の類型が示されるやうだ。中條百合子と湯浅芳子、又は長谷川時雨のネットワーク、平塚らいてうの辛口批評など、(続↓)2018/05/19
佐倉
10
紹介されているのは男も女も山気の多い、人生の一瞬を爆発させるような人ばかり。とてもじゃないが好きになれそうにない。浪漫の裏側にある痛々しさというべきか。とはいえ、社会規範にがんじがらめにされた女性が名を残し自由を謳歌するには、その痛々しさに賭けるしか無かった、という側面も有るかもしれない。そんな中、現代の目で見ても安定した精神の持ち主である望月百合子氏、盲人福祉に大きな役割を果たしたろう斎藤百合氏には興味を持てた。あまりに晩年が悲惨すぎる江口章子など、確かにいけすかないけどここまでなれとは思わなかったよ…2023/03/02
mymtskd
9
大正から昭和初期に活躍した女性を42人も取り上げているので、中にはこんな人もいたのだと初めて知る女性も少なくない。嵐山光三郎氏の「文人悪妻」に似ているが、著者が同性ならではの共感や憧れ、また同性だからこその辛辣な見方もあって、読み応えがある。ただ、ところどころ体言止めが多用されたり文章の粗い部分があるのが残念。2020/03/13